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作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
フラノールの一番長い夜 サザム氏 ロイド×コレット 2004/04/11 -

「……だろ。やっぱりそうだって」
「え〜、そうかなぁ?」
ロイドとコレットはフラノールの高台で語り合った後、宿屋に戻ってとりとめのない会話を交わしていた。
何となく一緒にいたいという気分から、自然な成り行きでロイドの部屋へと連れ立っていったのだ。
明日からの事は気に掛かるが、外で話した以上の事を考えていても仕方がない。
ベッドの端に並んで腰掛け、重い使命を束の間だけ忘れ、過去の楽しい出来事や身近な話題に花を咲かせる。
お互いに想いを寄せ合う二人にとって、こうした何気ない時間を共有する事は、何よりも貴重な物だった。
「……だけど、ロイドと二人っきりでこんなに話すなんて、ずいぶん久しぶりだね」
「そうだな。いつもなら、俺はジーニアスと、コレットは先生と一緒の部屋だもんな」
「みんなでワイワイ話すのもいいけど、たまにはこういうのもいいね?」
「ああ、本当にな。向こうに行ってるリフィル先生たちには悪い気もするけど」
「あ、そう、だったよね……。私、ちょっと不謹慎だったかな?」
仲間の半数と別行動をする事になった原因を思い出し、コレットの顔に薄く蔭りが差した。
リフィルとジーニアス、リーガルとプレセアは、フラノールの医師の護衛としてアルテスタの家に行っている。
天使達の襲撃で重傷を負ったアルテスタが、リフィルの治癒術でも追いつかない程の危険な状態だったからだ。
それを忘れて笑っていた事に、コレットの良心がちくちくと痛む。
一方ロイドは、自分の何気ない台詞のせいで落ち込んでしまったコレットに、慌ててその場を取り繕う。
「大丈夫さ! しいなが推薦した医者とリフィル先生がついてるんだから、絶対助かるって!」
必要以上に大きな声で、コレットを励ますように力強く断言した。

「うん、でも、万が一ってことも……」
「ある訳ねえよ! 大体、ドワーフってのはやたらと頑丈に出来てるもんだし」
コレットの笑顔を取り戻したくて、ロイドはわざと軽い調子で言い募った。
「うちの親父なんて、救いの塔のてっぺんから落ちても、メシ食って寝たらピンピンしてるぜ、きっと」
「もう、そんな事言ったら、またダイクおじさんに怒られちゃうよ?」
「ま、そんな訳で、アルテスタさんも絶対大丈夫だ。だからコレットも気にすんじゃねーぞ?」
もっともらしい顔で頷きながら、ロイドは立てた人差し指を振りつつ、コレットに軽く目配せをする。
「……そだね。アルテスタさんもきっと良くなるよね。……ありがと、ロイド」
ロイドの冗談めかした心遣いに、コレットは暗い表情を振り払って、小さく感謝の言葉を呟いた。
「あ、そうだ!」
「ん? 何だよいきなり」
「あのね。アルテスタさんで思い出したんだけど、私、ロイドに見せたいものがあったんだ!」
気分を切り替える為か、コレットはポンと胸の前で両手を合わせ、にっこりと笑った。
今までの流れから唐突に話題を変えられて、ロイドは軽く首を傾げる。
「ねえ、ロイドも見てみたい?」
コレットの思わせぶりな台詞だけでは、何を見せたがっているのかはさっぱり分からない。
だが、それを正直に言って、せっかく明るさを取り戻したコレットの気分を妨げるのも忍びない。
「まあ、コレットが見せてくれるって言うんなら、見てみたい、かな?」
「うん、じゃあ見せてあげる。ちょっと待ってね……」
ロイドのあいまいな返事に小さく頷くと、コレットは顎を引いて自分の胸元に視線を落とす。
そして、両手を無造作に上着の襟へ伸ばすと、もそもそと服の合わせ目を解き出した。

「おっ、おい、コレットっ!?」
コレットのいきなり過ぎる行動に、ロイドは大きく目を見開いた。
愛しく思っている少女が、突然目の前で服を脱ぎ始めたのだから、動揺するのも無理は無い。
しかし、そんなロイドの態度を気にも止めず、コレットは緩めた襟元を片手で大きくはだけさせる。
「ほらほら、見て!」
「……っ!」
肩口まで露わになったコレットの肌の眩しさに、硬直したロイドはぐっと息を呑んだ。
「ね、すごいでしょ〜。たった一日で、こんなにキレイに治っちゃったんだよ〜?」
コレットは自分の剥き出しにした肩へ目を向けたまま、誇らしげな口調でそう訴えた。
彼女はただ、クルシスの輝石の拒絶反応から回復した様子を、ロイドに見せたいと思っただけであった。
まるで奇怪な鉱物のように変質していた皮膚は、確かにその痕跡すら残していない。
つるんとした肌を眺め、かさぶたの取れた痕を自慢する幼児のように、無邪気な笑みを洩らす。
けれど、ロイドの方にしてみれば、それはあまりにも刺激的な光景だった。
(本当、綺麗、だよな……)
コレットの素肌は白く艶やかで、浮き出た鎖骨の線と細い肩が、流麗な曲線を描いている。
更に、襟を大きく開けているお陰で、ささやかな胸の膨らみの始まる辺りまでがちらりと覗いていた。
本人は自覚していないだろうが、その姿は清純な色香を強く放っている。
村で一緒に水浴びをした時などに、より露出度の高い姿を見た事もあるが、それと今とでは状況が違う。
「……どしたの、ロイド?」
「わぁっ!?」
一緒に感心してくれると思っていたコレットは、当てが外れた様子で、黙り込んだロイドの顔を覗き込む。
その呼び掛けで我に返ったロイドは、飛び跳ねるようにコレットへ背を向けて、ベッドの上にあぐらをかいた。

「バッ、バカ、やめろよなっ!」
「ふぇ、何が?」
吐き捨てるようなロイドの声に、コレットはきょとんとした顔で問い掛けた。
全く他意の無かったコレットにしてみれば、ロイドが何に動揺しているのか、本気で分からない。
しかし、ロイドは耳の先をうっすらと赤くしたまま、苛立たしげにガシガシと髪を掻き毟った。
「あっ、あのなぁ! 俺だって一応、男なんだぞっ!」
「うん、知ってるよ?」
それがどうしたのと言わんばかりの返答に、ロイドは大きく溜息をついた。
コレットはその気がないのに、一人だけ勝手に慌てている自分が、どうにも間が抜けているように思える。
「だからな、そういう事されると、俺が困るんだよ!」
「……えっと。ロイドが男の子だと、ロイドが困るの? どうして?」
「だあぁっ、何で分からねえかなぁっ!」
コレットの天然ぶりには慣れているロイドも、あまりの察しの悪さに頭を抱えたくなった。
自分からこれ以上の説明をするのは気恥ずかしいが、言わなければ到底納得してくれそうにない。
身を乗り出して顔を伺おうとするコレットから顔を逸らし、振り絞るようにして口を開く。
「だから、いきなり服を脱いだりされたら、変な気起こしそうになるって言ってんだよ!」
「変な気って、……どんな気?」
「ああくそっ! つまり、嫌でもそういう事考えちまうってことだよっ! これ以上言わせんなっ!」
「だからそういう事って、……え? あ、やだっ!」
そこまで言われてようやくコレットは、自分の行為がどれだけ大胆なものだったかに気付く。
今更ながらにはだけた胸元を掻き合わせると、ロイドの後を追いかけるように頬を赤く染めていった。

「あ、あうぅ……」
「分かっただろ? 頼むから、もうちょっと考えてくれよな」
「あっ、あのっ、ごめんね。私ただ、ロイドにちゃんと治ったよ、って教えたくて……」
「……いや、俺の方こそごめん。俺の勝手な都合で、怒鳴ったりしちまってさ」
ロイドとコレットは互いに背を向けたまま、肩を竦めてぼそぼそと謝り合った。
どちらも相手のことを大事に思っているだけに、恥ずかしさよりもむしろ申し訳ないという思いが強い。
「ううん、ロイドは悪くないよ。私がよく考えなかったのが悪いんだから」
「んな事ねえって。コレットにはそんな気なかったんだから、下らねえこと考えた俺の方が悪い」
「違うよ! 私がおバカさんだったから……」
「だからコレットは悪くねえって……」
「……あっ!」
「うっ!」
言い合いになる寸前で、同時に振り返って顔を見合わせてしまい、慌てて首を正面に向け直す。
普段なら安らぐはずの相手の顔が、気配が、一度こうして意識し出すと、どうしようもなく胸を高鳴らせる。
「えっと、じゃ、じゃあさ、どっちも悪かったって事にしよ?」
「あ、ああ、そうすっか」
「……な、何だかちょっと、お部屋の中、熱いね?」
「そっ、そうだな。薪の量が多すぎたかも知んねーな、ははっ……」
もじもじと指を絡めながら、コレットは自分の気持ちを誤魔化すように話題を変えようとした。
けれど、動揺したロイドもわざとらしい受け答えしか出来ず、話の接ぎ穂が見つからない。
身動きするのもはばかられるような気まずい雰囲気が、二人の間に漂った。

「……もう、寝るか?」
しばらくして、居心地の悪い沈黙に耐えかねたロイドは、ボソッと口を開いた。
「えっ!?」
「あっ、い、いや、そういう意味じゃねえぞ! コレットは自分の部屋に戻って、って事だ!」
コレットが息を呑む気配に、ロイドは更に頭へ血を昇らせて、足りなかった言葉を重ねた。
自分の台詞から生じた妄想を、ぶんぶんと頭を振って消し去ろうとする。
素直で優しくて、どんな重責もその小さな身体に抱えてしまう、シルヴァラントの神子。
そしてロイドにとっては、世界の運命と同じぐらいに大切な、一人の女の子。
彼女を本当に大事に思うからこそ、ロイドは勢いだけでそういった事を求めるつもりはなかった。
「ロイド……」
一方コレットは、ロイドのそんな想いの全てを、しっかりと感じ取っていた。
いつも自分を励まし、助け、辛い試練を共に歩んでくれる、頼りになる幼馴染。
そして、天使になっても怪物に変わっても、自分は自分だと言ってくれた、大好きな男の子。
そんな彼が、自分の事をそういった意味で求めてくれているという喜びが、戸惑いを大きく上回る。
激しい動悸を続ける胸元を片手で押さえ、残る手をロイドの背中へと伸ばし、上着の布をくいくいと引く。
「……あのね、いい、よ?」
「コレッ……ト?」
いぶかしげに自分の名を呼ぶロイドの後頭部へ、恥ずかしさを堪えながら小さく呟く。
「だから、その……。そういう意味でも、私は、いいよ……?」
「おっ、おいっ!?」
振り返ったロイドの顔をまともに見て、コレットはますます顔を赤らめた。

「お、お前なぁ、いきなりなに言い出すんだよっ!」
「だって、私のせいで変な気分になっちゃったんでしょ……?」
ゆっくりと近づいてくるコレットから身を引き、ロイドは慌てて首を左右に振った。
「だから、お前が責任感じる事じゃねえって! さっき、お互い悪かったって事で納得しただろ!?」
「うん、でも、私たちぐらいの歳なら、そういう事してもおかしくないんじゃ、ないかなって……」
コレットは羞恥に頬を染めながらも、僅かに期待と興奮を含んだ表情で迫る。
こういった状況に免疫の無いロイドは、すんなりと同意する事もできず、引きつった顔でたじろぐ。
「コレット、お前、意味分かって言ってんのかよ!?」
「そのくらい知ってるよ。それに、春にわんこさんとかがしてる処なら、何回か見た事あるもん」
「犬っておい……。ま、まあ、確かに同じ事だけどよ……」
少し得意げな顔でそう主張するコレットに、ロイドはガックリと脱力して答えた。
本人が同意したとはいえ、確実に初めてであろう彼女に、それを求めていいものかどうかと、軽く思い悩む。
「別に無理して言う事ねえんだぞ? その、初めてだと、女は痛いって話だし」
「そんなの、誰でも一緒だよ。それに私、無理なんかしてないもん。私、ロイドとなら……」
しかし、コレットは蚊の鳴くような声で、それでも正直に胸の内を語る。
「……本当に、いいのか?」
「うん。ちょっと怖い気もするけど、ロイドになら私、そういう事されてもいいよ。……ううん」
自分の言葉を打ち消すように首を振ると、コレットは潤んだ瞳でロイドを見つめる。
「ロイドのこと好きだから、そういう事はロイドに……。ロイドだけに、して欲しいの……」
その顔にはすでに迷いは無く、素直な欲求と無垢な好奇心を覗かせている。
小声で告げるコレットに今まで以上の愛しさを感じ、ロイドは彼女の肩に両手を掛けて、軽く引き寄せた。

              ◇  ◇  ◇

「そ、それじゃ、その……。キス、してもいいか?」
「……うん」
ロイドがおずおずと尋ねると、コレットはそっと瞼を閉じて、唇を差し出すように顔を上向けた。
かすかに震える睫毛と小さく可憐な唇が、ロイドの目にとてつもなく魅力的に映る。
「じゃ、じゃあ、するぞ……」
「……ん」
もう一度確認するように呟くと、コレットは両手を胸で組み合わせたまま、コクンと小さく顎を引いた。
ロイドは息を止めて慎重に顔を近づけ、軽く合わせるだけの口付けをする。
ふわっとした温かい唇と、すぐ目の前にある愛しい少女の顔に、ロイドは頭がクラクラしてくるのを感じる。
ほんの数秒、柔らかな感触を味わってからロイドが顔を離すと、コレットは静かに瞼を開いた。
「……あはっ。キス、しちゃったね〜」
「おっ、おう……」
口元を押さえながら、いつものほにゃっとした微笑みを浮かべるコレットに、ロイドはぎこちなく頷いた。
唇に残る柔らかな余韻に、ロイドの心臓は破裂しそうなほど激しく脈打っている。
「頭がぽわぽわして、胸がすごくどきどきいってる……。ロイドはどう?」
「ああ、俺も同じだ。すげえ緊張してる……」
「ふふっ。じゃ、またおあいこだね?」
「ん、まあ……な」
そう言いながら、コレットはそれほど緊張した様子もなく、ただ嬉しそうにニコニコと笑っている。
何だか理不尽な様にも思えて、ロイドは小さく口篭もりながら、コレットの顔を複雑な表情で見返す。
コレットはそんなロイドの首に両腕を廻すと、悪戯っぽい目つきでそれに応えた。

「ね、ロイド。もっと、いっぱいキスして?」
「う、ああ……」
「ん……、んっ、ぅん……」
少し甘えた声でねだられて、ロイドは軽くあごを上げたコレットと、何度も浅い口付けを交わした。
今度はコレットも薄く目を開けて、間近にあるロイドの瞳を覗き込んでくる。
ロイドはその視線に何となく気恥ずかしさを覚え、少し顔をずらすと、朱に染まった頬に唇を寄せる。
するとコレットはくすくすと笑いながら、ロイドの腕から逃れるように軽く身をよじった。
「ふふ、やだぁ……。ロイド、それ、くすぐったいよ……」
「わ、笑うなよな。俺、けっこう真面目にやってんだからさ」
「だってロイド、わんこさんみたいみたいだから、んふっ、なんかおかしくて……」
ロイドが軽く文句を言っても、コレットは面白がるように顔をほころばせ、逃げるそぶりを見せ続けた。
けれど、両腕はしっかりとロイドの首に巻きつけていて、少しも嫌がっている様子がない。
コレットの戯れるような口調に、ロイドの緊張も一気にほぐれていき、代わりに悪戯心が頭をもたげる。
「あのなぁ。……犬だったら、もっとこういう風にするもんだろ?」
「やんっ!」
舌を伸ばして頬を舐め上げると、コレットはピクンと首を竦めて可愛い声を出した。
「もぉ、ロイドだって笑ってるじゃない。ぜんぜん真面目じゃないよ、ん、あはっ……」
「コレットが変なこと言うからだろ? 俺だけ真剣になってるのが馬鹿みてえじゃねぇか」
「ん……っ、やっぱりロイド、わんこさんだよ……」
時々舌で舐めながら左右の頬へ交互にキスをされ、コレットは喉の奥で笑いながら小さく目を細める。
ロイドが肩に置いていた手を背中に廻すと、寄り添うように身体をもたれ掛けていった。

「んふふっ。だったら私も、ロイドと一緒にわんこさんになっちゃおうかな?」
「はぁ?」
コレットはロイドの顔を正面から覗き込み、ちょっとした悪戯を思いついたように目を輝かせた。
小首を傾げて呟くコレットに、ロイドは間の抜けた声を返す。
「う〜っ、わんっ♪」
「んぷっ! コっ、コレットっ、なんて事すんだよっ!?」
ふざけた調子で犬の鳴き真似をすると、コレットはロイドの唇をちろっと掠めるように舐めた。
熱く湿った舌の感触を受け、ロイドの背筋にぞくっとむず痒さにも似た痺れが走る。
ロイドが慌てて首を反らすと、コレットは小さく舌を出しながら、得意げな顔で微笑んだ。
「えへっ、さっきのお返しだわん。わんこさんは、好きな人の顔をこうやって舐めたがるんだわん」
「わ、わんって何だよ、わんって!?」
「私はもう、わんこさんになっちゃったんだわん。ロイドは、わんこさんは嫌いかわん?」
「いっ、いやその、嫌いじゃねぇけどよ……」
ささいな口調の変化がコレットの可愛らしさを更に強調して、ロイドの心を騒がせた。
一方、犬になりきった事で羞恥心を振り払ったコレットは、積極的に顔を寄せ、ロイドの頬へ舌を伸ばす。
「ん〜っ……」
「うわっ! ちょっ、くすぐってえって、コレット!」
「んっ、ちゅ……。ほらぁ、ロイドだって、こんな事されたらくすぐったいんだわん?」
「こっ、こら、コレット、だからやめろって!」
「今はコレットじゃなくて、わんこさんだわん。んっ……」
コレットは逃げようとするロイドの首にしっかりとしがみ付き、顔中をちろちろと舐め回す。
子犬のように身体をすり寄せてくるコレットに、ロイドは軽く苦笑を洩らした。

「ったく、ずいぶん人懐っこい犬だな……」
「わん、わんっ♪」
ぽふっと頭に手を置くと、コレットは尻尾があったらパタパタと振りかねない調子で、嬉しそうに鳴いた。
きらめく蒼い瞳は、忠実な愛犬が飼い主に対して向けるような、全幅の信頼と愛情を映し出している。
「じゃあ、撫でてやったら喜ぶかな?」
「ん、くぅん……。わんこさんは、撫でられるのも大好きだわん……」
しばらく付き合ってやる事にして、ノイシュにするように頭を撫でてやると、コレットは小さく鼻を鳴らした。
ロイドはさらさらとした細い髪を優しく撫で付けながら、頬の肉を唇でついばむようなキスを重ねる。
するとコレットも、お返しとばかりにロイドの頬や目元を舌先で舐める。
代わるがわる相手の顔に唇を寄せ合い、二人は高まる興奮に息を荒くしていった。
「んちゅ……」
「うおっ!? ちょ、ちょっと待て、それは反則だろっ!」
「えへへっ。わんこさんには、人間の言葉なんて通じないわん♪」
耳たぶをぺろっと舐められて、ロイドはくすぐったさにビクンと首を竦めた。
しかしコレットは、そんなロイドの反応が気に入ったのか、余計に面白がって耳元へ舌を近づける。
「そうかよ、そっちがそういうつもりなら……」
ロイドは軽く怒ったふりをしながら、背中をするすると伝って、コレットの小さなお尻に手を伸ばした。
そのままそこを撫で始めるロイドの手に、コレットの華奢な肩がひくっと跳ね上がる。
「あっ、やだロイド、どこ触って……、きゃうん!」
それに気を取られて背後を振り向いた隙に、ロイドは唇を首筋へ滑らせて、軽く音を立てて吸う。
不意をつかれたコレットの口から、意識せずに子犬そっくりの鳴き声が洩れた。

「あれ、この犬、なんか鳴いてるな。でも俺、犬の言葉なんて分かんねえしな……」
「やっ、ロ、ロイド……。そんなの、ずるいよっ……んっ!」
自分のおふざけを逆手に取られ、コレットは犬の真似も忘れて、湧き上がる快感に身体をくねらせた。
腰から背筋を遡って来る甘いわななきと、首筋を伝う唇の感触に、頭の芯が熱く痺れてくる。
「そうだ、また舐められたりしねえように、口も塞いだ方がいいかもな……」
「あむっ!? わふっ、んんっ、んむぅっ……!」
ロイドはコレットのうなじを押さえつけると、口元を覆い隠すように唇を重ねて、大きく舌を突き出した。
突然口内に侵入を受け、動けないでいるコレットの舌を、ロイドの舌が絡め取っていく。
「んっ、む……。んるっ、もっ、んうぅ……」
「ふぅっ、んんっ、ん……。くふぅ、んにゅぅ、んっ……」
驚きに一瞬身体を強張らせたコレットも、すぐにロイドの動きを受け入れ、それを真似ていった。
コレットの口の中で二人の舌先がのたくり、絡み合い、柔らかな水音を立てる。
ロイドが唇を離すと、腕の中でくったりと脱力したコレットが、トロンとした目つきで囁いた。
「っ……はぁ。ロイド、今のキス、すごくえっちだったよぉ……」
「あ、わ、悪ぃ。ちょっと調子に乗りすぎたか?」
ロイドが機嫌を伺うような問いを投げかけると、コレットはふるふると左右にかぶりを振った。
「そんな事……ないよ。でも、わんこさんの真似は、もうおしまいにするね……」
「そ、そうか?」
少々残念に思いながら、ロイドが顔を覗き込むと、コレットはしっとりと潤んだ瞳でそれを見返す。
「うん。……だけど、今のキスは、もっとして欲しいな。んっ……」
「お……、っむ!」
コレットはひょこんと身を乗り出して、今度は自分から唇を深く重ねていった。

              ◇  ◇  ◇

「んっ……く、んむ……、んっん……」
「ふぁ、あむっ……。ん、ふぅ……っ、ん……」
二人は入れ違いに傾けた顔を重ね合わせ、飽きることなく舌を絡ませ続けた。
息を継ぐ間も惜しみ、互いの存在を確かめるように相手の背中を抱き、身体を押し付けていく。
胸の奥にわだかまる熱は全身に甘美な痺れを巻き起こし、原始的な衝動がもっと先へと急き立てる。
下半身の疼きに耐えかねたロイドは、身を寄せるコレットの肩に手をやって、静かに引き離した。
「んぷ……っ。なぁ、コレット……」
「はっ、あ……。な、なに……?」
糸を引く唾液を舐め取りながら、ロイドは目の前のコレットにそっと囁いた。
コレットは湯気が立つほどに顔を紅潮させ、乱れた息からようやくと言った風情で短く問い返す。
「そろそろ俺、コレットの裸が見てえんだけど……、いいか?」
「あっ……。えっ、と……」
ロイドの手が上着の裾に伸ばされると、コレットはちょっと困った様子で眉をひそめた。
服の端を軽く押さえながらしばらく迷った後、上目遣いにロイドの顔を見上げ、ポツリと呟く。
「……いいけど、ロイド、笑ったり、がっかりした顔したりしない?」
「はぁ? 何だよそれ」
「だってその、私、胸とかぺったんこだし……。あんまり、見るとこ無いかも……」
本気で不安そうに告げるコレットに、ロイドは思わず破顔した。
どうやら、年齢の割に成長していない事ばかりに気を取られ、自分の魅力に気付いてすらいないらしい。
いかにも彼女らしい物言いに、ロイドの胸におかしさの入り混じった愛おしさが込み上げていった。

「コレット、お前なぁ……」
「ふにゃっ!?」
咎めるようにコツンと額を軽く合わせると、コレットの口から髭をつままれた子猫にも似た声が上がった。
びっくりした顔のコレットに、ロイドは鼻先を擦り合わせるような体勢で語りかける。
「何を悩んでるかと思えばよ。そんな事、俺が気にするとでも思ったのか?」
「……で、でも、男の人って、やっぱり胸とかがおっきい子の方がいいんでしょ?」
尚も安心できない様子のコレットに、ロイドは静かに言い聞かせる。
「そんなの関係ねえよ。俺は、コレットのだから見たいって言ってんだよ」
「ほっ、ほんと? ほんとのほんとに笑ったりしない?」
「ああ、ぜってぇそんな事しねえよ。それとも、俺の言う事がそんなに信用できねえか?」
「ううん、そんなこと、ない、けど……」
ロイドに対する信頼を本人に疑われてしまっては、コレットとしてもそれを否定するしかない。
その答えを受けて、ロイドはコレットの上着の裾を優しく持ち上げ始める。
「じゃあ、脱がしてもいいな?」
「あっ、ちょ、ちょっと待って!」
「ん? まだ何かあんのか?」
慌ててロイドの手を押さえつけ、コレットは僅かに身体を引く。
裸を見せる事に不安が無くなったとは言え、他人の手で服を脱がされるのは、やはり気恥ずかしい。
「じ、自分で脱ぐから……。ロイドは手、出さないで……」
コレットはロイドの傍から離れると、ごそごそと上着の袖から腕を抜いていく。
じっとその姿を見つめるロイドの視線が、コレットの胸の昂ぶりを更に押し上げていった。

「ロイド、あんまりじろじろ見られてると、私、脱ぎづらいよ……」
両腕を窮屈そうに服の中へ収めた処で、コレットは一旦動きを止めてそう訴えた。
上着の膨らみ具合から、前腕を胸の前で交差させて、見えてもいないそこを隠しているのが分かる。
「だったら、俺が脱がせてやろうか?」
「そっ、それはもっと駄目! ……だからその、ちょっとだけ、横向いてて?」
「どっちにしろ見られるのにか?」
不思議そうに言うロイドに、上手く自分の思いを伝えられず、コレットはもどかしげに顔を歪める。
「ぬ、脱ぎ終わるまででいいから……。ねっ、お願い……」
「分かったよ。……ほら、これでいいか?」
頼りない懇願に負けて、ロイドは顔を横に向け、コレットの身体から視線を逸らす。
しかし、わざと焦点をぼかしたロイドの視界には、恥らう彼女の姿がしっかりと捉えられていた。
「うっ、うん。……いいって言うまで、こっち見ないでね?」
「あっ、ああ」
「んっしょ、んしょ……」
ロイドの同意に安心したコレットは、こっそり見られているとも知らず、上着の襟に頭を潜らせていった。
いかにも脱ぎにくそうにしながら、長い裾が上へと手繰り寄せられ、顔が隠れていく。
目元が隠れている隙にロイドが横目で窺うと、持ち上がった裾の端から、可愛らしい臍の窪みが覗いていた。
「ん、ぷあっ……」
やがて、大きく両腕を挙げた格好のコレットは、水面から顔を上げるようにして上着から首を引き抜いた。
ロイドが慌てて目線を戻すと、視界の隅で持ち上がったコレットの髪がふわりと流れ落ちる。
コレットは脱ぎ捨てた服をきちんと畳み、それをベッドの脇へそっと押しやった。

「……なあ、もういいか?」
「も、もうちょっとだけ待って……」
横を向いたままのロイドに急かされて、コレットは片手を背後に廻し、下着の止め具を手早く外した。
肩紐から腕を抜きつつ、ロイドがちゃんと視線を外してくれているか、ちらりと目を動かして確認する。
たとえ見られていなくとも、一気に胸を晒す気にはなれず、片腕を間に入れてから胸の覆いを取り外す。
外してから、今度は下着をどこに置くのかでしばし迷い、結局は畳んだ上着の下へそそくさと隠す。
最後に軽く深呼吸をすると、手持ち無沙汰にしているロイドに向けて、意を決したように声を掛けた。
「……ロイド。もういいよ、こっち向いても」
「お、おう」
コレットの許しを受け、ロイドはゆっくりと首を巡らして、彼女の肢体を正面から見据えた。
肉付きの薄い華奢な身体の線と、つつけば弾けそうなど瑞々しい白い肌に、ロイドの目が奪われる。
けれど、胴体を抱きかかえるようにした彼女の両腕が、その肝心な部分を隠していた。
「コレット、手ぇどけてくれないか?」
「やっ、やっぱり、どけなくちゃ駄目、だよね?」
「当たり前だろ? そうしなきゃ見えねえじゃねえか」
「そっ、そうだよね……」
ロイドの指摘にばつの悪い顔をして、コレットはそろそろと腕から力を抜いていった。
ある程度まで力が抜けると、後は腕の重みがそれを引き継ぎ、胸の前からずり落ちていく。
「んっ……」
コレットがきゅっと目を閉じるのと同時に、両手がぽとっとシーツの上に転がり、小さな膨らみが姿を現す。
なだらかな二つの丘の頂点で、つんっと張り出した小粒の突起が、その存在を健気に主張していた。

「へぇ、ほんとに小さ……」
「……っ!」
「くてぶっ!?」
思わず洩らした言葉の途中で、ロイドは横殴りの枕の一撃を顔面に喰らった。
ロイドの首がぐきっと横を向き、不意を衝かれた為に少しだけ意識が遠くなる。
じんじんする鼻を押さえて向き直ると、コレットは振り抜いた枕を放り出し、両腕で再び胸元を隠していた。
「いってぇ……。コレット、いきなり何すんだよ」
「だって、ロイド今、ちっちゃいって言おうとしたぁ!」
ロイドが文句を言うと、コレットはきっと睨み返しながら、泣きそうな声で訴えた。
身を捩ってむ〜っと口元を歪めた、怒ったような恥ずかしがるようなその風情は、とても愛らしい。
しかし、ここで即座に気の利いた台詞を言えるほど、ロイドは女の子の扱いに慣れていない。
目を白黒とさせながら、肩を怒らせるコレットに抗議した。
「ん、んな事いったって、自分でもさっき、ぺったんことか言ってたじゃねぇか」
「自分で言うのはいいのっ! でも、ロイドに言われるのはヤなのっ!」
コレットはぷるぷると首を振りながら、聞き分けの無い子供のように頬を膨らませた。
ここまで強い口調で彼女になじられるのは初めてなだけに、ロイドは圧倒されたように語気を弱める。
「……そういうモンなのか?」
「そだよっ!」
微妙な乙女心を理解出来ないロイドは、コレットの返答に困った様子で鼻の頭を掻く。
「でもよ、俺、小さくて可愛いな、って言おうとしたんだぜ? そういうのも駄目なのか?」
「そっ……! 今さらそんなウソついたって、私、誤魔化されないもんっ!」
一旦怒った手前、コレットはその言葉を素直に受け入れられず、むきになって言い返す。
けれどその実、彼女の小さな胸はひどく高鳴り、怒りとは違う感情で、頭にカッと血が昇っていった。

「そんな嘘ついて何になるってんだよ。俺、本当に可愛いと思うぜ?」
「うっ、ウソだもん……、信じないもん……」
ロイドは真面目な表情で告げて、拗ねるコレットへにじり寄った。
長い付き合いだけに、ロイドが紛れも無く本気で言っているという事ぐらいは、コレットにも分かる。
その言葉には次第に勢いが無くなり、視線は気恥ずかしげに横へ逸れていく。
「ホントだって。すげえ可愛いぜ、コレット。だから……な?」
「あっ……」
ロイドの指が手首を掴むと、コレットの腕は易々と胸から引き剥がされた。
優しげな声で囁かれて、コレットはもう、再びそこを隠そうとする気力を失ってしまっている。
「ほら、どこも隠す必要なんてねえじゃねえか。可愛いし、それに……」
「あんっ!」
「……こんなに柔らけぇ」
「あっ、ロッ、ロイドっ……」
ロイドはふわりとコレットの胸を掌で包み込むと、感触を確かめるようにそっと揉み込んだ。
それだけで、小さな肉の丘はふにっと形を変え、ロイドの手に温もりとしなやかな手応えを返す。
硬直したように両手を肩の前に掲げたままのコレットの胸元で、ロイドの両手がゆらりと円を描く。
「大体、コレットの身体で、可愛くない処なんてねえよ。俺は、コレットの全部が好きなんだからさ……」
ロイドは背中を丸めてコレットの胸の間に顔を埋めると、慈しむように頬をすり寄せた。
伝わる早い鼓動と、肌から漂う甘い匂いに、ロイドは記憶に無い母親に縋っているような安心感を覚える。
「あふ……っ。あ、ロイドっ……」
その気持ちを感じ取ったのか、コレットの腕がゆっくりと降り、ロイドの頭をやんわりと抱き締めた。

              ◇  ◇  ◇

「んっ、ちゅ、ちゅっ……。ん、んちゅっ、ふぅ……」
「あ、んっ、ふ……。んっ、くぅ……」
ロイドは両手で胸を揉みしだきながら、乳飲み子のように舌を鳴らして、左右の突起を交互に吸い上げた。
鼻に掛かったコレットの喘ぎが脳裏に響き、薄く汗ばんだ柔肌が掌の中で更なる熱と潤いを帯びていく。
外側から膨らみを寄せ上げ、はむっとほお張って舐め廻すと、充血した先端をころころと舌の上で転がす。
目の前でかすかに揺れる、唾液に濡れ光った薄い桜色の乳首が、まるでロイドを誘っているようにも見える。
その誘惑に抗うことすら考えつかぬまま、ロイドはコレットの胸に没頭していった。
(……あはっ。なんか、ロイド、可愛いかも……)
一方コレットは、無心に自分の胸へ吸い付くロイドに対して、母性愛に近い感情を抱き始めていた。
今まで考えた事もなかったその想いにつられ、小さな子供をあやすように、逆立った硬い髪をそっと撫でてみる。
愛撫によって起こる快楽とは別に、とても豊かで温かい気持ちが、コレットの胸をひたひたと満たしていく。
同時に、好きな相手に求められ、触れられているという充足感が、甘美な恍惚となって背筋を震わせた。
「ん、えへっ……。ロイドぉ……」
「……ん? どうかしたか、コレット?」
「ううん、なんでもない、よ……」
「……?」
ふと口を衝いて出た呼び掛けに顔を上げたロイドへ向けて、コレットははぐらかすようにかぶりを振った。
ロイドは少し物問いたげな視線を投げてから、気を取り直して再び胸へ舌を這わす。
(言ったらロイド、きっと怒るもんね。だからこれは、私だけの秘密だよ……)
官能の高ぶりに身を任せながら、コレットはその想いを、胸の奥の一番大事な場所へそっとしまい込んだ。

「あふっ、……ぅん、んんっ、ん……」
(やべぇ……。俺、収まりつかなくなってきた……)
コレットの胸を撫で回している内に、ロイドの股間はズボンを突き破らんばかりになっていった。
吸い付くような肌の感触も、熱病のように火照った肉の柔らかさも、何もかもが心地よい。
自分の動きの一つ一つにコレットが返す可憐な吐息に、欲求が激しさを増す。
ロイドの視線は胸から臍を下り、膝を崩して横座りになっているコレットの下半身へと移動していった。
「コレット……。こっちも見ていいだろ?」
ロイドは片手をコレットの腰の辺りに伸ばすと、厚手のストッキングに親指を掛けながら尋ねた。
軽く引き下ろすと、黒い布地の下からちらりと白いショーツの縁が覗き、興奮と期待に息が荒くなる。
しかし、もう一方の手を掛けようとした処で、コレットの手がそれ以上の動きを押し留めた。
「ん、だめぇ……」
「えっ、何でだよ?」
軽くたしなめるようなコレットの言葉に、ロイドは少し非難を含んだ声を上げた。
ここまでで終わりにされてしまっては、滾る欲求の持って行き場がない。
コレットも望んでくれていると思っていただけに、ロイドの胸に僅かながらも落胆と苛立ちが込み上げる。
「だって、私ばっかり裸になるんじゃ、不公平だもん」
「え……、それって?」
けれど、続くコレットの呟きは、彼の予想を大きく外れた展開を見せる。
「……だから、ロイドも脱いで。ロイドがぜんぶ見せてくれたら、私もぜんぶ見せてもいいよ?」
ロイドの耳元に唇を寄せて囁き、コレットは薄く微笑んで首を傾ける。
その仕草と言葉に引き込まれるような色香を感じ取り、ロイドの喉が大きく音を立てて鳴った。

「わ、分かった。脱げばいいんだな?」
ロイドは上着のボタンを乱暴に外し、毟り取るように服を脱ぎ始めた。
しかし、途中でコレットがじぃっと見つめているのに気付き、猛烈な恥ずかしさを覚えて手を止める。
「なっ、何だよ。そんなに見るなよな」
「あれ? だってロイド、私の時は『どうせ見られるのにか?』って言ってたよ?」
「わ、悪かったよ。確かに、脱いでる処をじっと見られてっと、すげえ恥ずかしいな」
「んふ、でしょ?」
勝ち誇ったように告げるコレットにやり込められ、ロイドは気まずげに彼女へ背を向けた。
シャツを勢い良く脱ぎ捨てると、火照った肌が部屋の空気に冷やされて、少し落ち着いた気分になる。
「自分で言ったんだから、コレットもちゃんと脱いでくれよな」
「うん、いま脱いでるよ……、んっと。でも、ロイドも脱ぎ終わるまで、こっち見ちゃ駄目だよ?」
「ああ、分かってる……」
声と共に聞こえる衣擦れの音が、ロイドの想像力を嫌と言うほど刺激した。
早くコレットの一糸纏わぬ姿が見たくて、ベルトを外す手が他人のもののようにもどかしい。
下着ごとズボンを引き下ろすと、狭い場所から開放された股間の物が、待ちかねたとばかりに大きく天を指す。
蹴り剥がすようにズボンから脚を抜き、適当に丸めてベッドの端へ放ると、背後のコレットに声を掛けた。
「……全部脱いだぞ。これでいいんだろ?」
「うん、じゃあ、こっち向いて、見せて……」
求めに応じて振り返ると、コレットは一足早くロイドの方を向いて、シーツの上にぺたんと座り込んでいた。
両手は軽く開かれた膝の脇に置かれ、まだ幼さの残る肢体を隠すものは既に何も無い。
柔らかそうな下腹部にひっそりと生い茂る金色の巻き毛に、ロイドの視線は強烈に引き付けられた。

「ふわぁ……。男の子のって、そんな風になっちゃうんだね……」
コレットは、初めて見る勃起した状態の男性器を注視して、呆けたような声を洩らした。
小さな子供のものならば見た事はあるが、それと同じものだとは思えないほど大きく、形状も全く違っている。
「亀さんの頭にちょっと似てるね……。へぇ、なんか不思議……」
「だ、だから、あんまり見るなって。恥ずかしいんだからよ」
好奇の視線に晒されて、ロイドが居心地悪げに身じろぎすると、屹立した剛直が小さく揺れた。
バネ仕掛けの玩具にも似たその動きに誘われるように、コレットは身を乗り出して顔を近づける。
胸がきゅんっと引き絞られるような感覚と、腰の辺りから生じた疼きが、彼女の口を勝手に衝き動かした。
「……ねえロイド。それ、触ってみてもいい?」
「なっな、なに言い出すんだよ! コレット、ちょっとおかしいぞ!?」
「でも、ロイドだって私の胸とか触ったでしょ? ……それとも、私に触られるのは、いや?」
「べっ、別に、嫌じゃねえけどよ……」
コレットがねだるように問い掛けると、ロイドは複雑な思いに表情を動かし、言葉を濁した。
しかし、そのまま期待を込めた目で見上げ続けられると、やがて根負けしたように大きく息をつく。
「ふぅ……、分かったよ。コレットの好きなようにしな」
「うん。じゃあ、触るね?」
大きくあぐらをかいたロイドの前に跪き、コレットは人差し指でちょんと幹の半ばをつついた。
ロイドの腰の物は、硬く弾力に富んだ感触を返すと共にぴくっと反応し、すぐに元の位置に戻る。
「うっ……」
「わっ、かちこちだね〜。それに、すごく熱くなってる……」
指先で様々な方向に押しても、それに抵抗するようにぴょこんと立ち直り、頑固なまでに天を指し示す。
嗅ぎ馴れない異性の匂いに鼻腔をくすぐられながら、コレットは興味深い面持ちでそこを突き続けた。

「……おいコレット、人の身体で遊ぶなよな」
「あ、ごめんね。つい面白くって」
ロイドの所在無げな文句に、コレットはちろっと舌を出して笑みを零した。
「だから、オモチャじゃねえってのに。……なあ、もういいか?」
「ん、待って、もうちょっとだけ……」
「……うっ!?」
コレットは指で小突くのをやめると、今度はその大きさを確かめるように、掌で包み込んだ。
そのままきゅっと握ると、ロイドのそれはドクンと脈打ち、指の中で強く跳ねる。
「きゃっ!? い、痛かった?」
「いや、痛くはねえけど……。ただちょっと、びっくりしたっていうか……」
「そうなの? じゃあ、もっとそおっと触った方がいい?」
「う、まあ、その方が……」
はっきりしないロイドの声に従って、今度は小動物を扱うように、やんわりと指を握り込んだ。
筋張った手応えを掌全体で感じ取ると、熱い肉塊が歓喜にわななく。
「このくらいなら、いい?」
「んくっ……。あ、ああ、いいぜ……」
くきゅくきゅと指を揺らめかせると、ロイドは満足そうな吐息に乗せて小さく答えた。
声の響きから、彼の気分を本能で感じ取り、コレットはふっと顔を上げ、ロイドの顔を振り仰ぐ。
「もしかして、ロイド、気持ちいい……の?」
「え、いや、その……」
ロイドは目を泳がせて誤魔化そうとするが、その表情は快感を得ている事を隠し切れていない。
自分の手でロイドが感じてくれているという事実に、コレットは肌が粟立つほどの悦びを覚えた。

「そうなんだ……。えへっ、なんか嬉しいな」
「……嬉しい?」
「うん。私も、ロイドに触られると気持ちいいから。ロイドもそうなんだって思うと、すごく嬉しい……」
コレットは乾いた唇を舌で湿らせると、視線を剛直に戻して、ゆっくりと指を踊らせた。
「じゃあ、もっとしてあげるね? ふぅん、こっちはぷにぷにしてる……」
「お、おい、そこは……」
「あっ、なにか出てきたよ? これ、なにかな……?」
「くぅっ!」
剛直を遡り、大きく膨らんだ先端を指先で摘むと、そこはまるでグミのように柔らかく歪んだ。
幹とは違う感触に興味を覚えて揉み解すと、頂点の穴から透明な雫が滲み出し、ぷっくりと珠を形作る。
何気なくそれを親指で拭うと、ロイドの身体がビクッと痙攣を起こし、快楽に震えたうめきが洩れた。
「ここがいいんだね……。私、なんとなく分かってきたよ……」
「コッ、コレット、やめろよ……」
「どうして……? ロイドのここ、こんなに気持ちよさそうにしてるのに……」
うっとりとした声で呟き、コレットは幹をきゅっ、きゅっと握りながら、親指の腹で何度もそこをくじった。
そのうちに、ぬめり気のある先走りが淫らな音を立てながら、白く泡立ってくる。
コレットは堪らないほどの衝動に駆られて、ロイドの先端に唇を寄せ、吸い付くような口付けを与える。
「んっ、ちゅ!」
「ふく……っ! コレット、おまっ、どこにっ!?」
「だって、何だかキスしてあげたくなっちゃったんだもん……。変、だよね、私……」
そう言いながらも、コレットの手は取り憑かれたように剛直を撫で回し、ロイドの快楽を引き出してゆく。
下腹の炙られるような熱と疼きに呼応して、コレットは無意識のうちに太腿を小さく擦り合わせていた。

              ◇  ◇  ◇

「あ……、また、おっきくなった……。ほんと、すごいね、ロイドのこれ……」
「くぅ……っ、はっ、はぁ……」
自分の脚の間に跪き、慈しむように剛直へ指を這わせるコレットに、ロイドは成す術もなく翻弄されていた。
指先は探り当てた急所を執拗に責め、唇から洩れる熱い吐息が、敏感な亀頭を優しく撫でてゆく。
時折投げ掛けられるコレットの艶を含んだ視線と、脚の動きに合わせて揺れる左右の尻肉が、意識を幻惑する。
自分で慰めた時とは比べ物にならない刺激と興奮に、射精の衝動がじりじりと首をもたげる。
このまま達してしまいたいという欲求を、もう一つの欲求で打ち消して、ロイドはコレットの手を制止した。
「コレット、もう、いいだろ……」
「えっ、なんで? ロイド、気持ちよくなかった?」
掌を剛直から引き剥がされると、コレットは不安そうに眉をひそめて、ロイドの顔色を窺った。
そんなコレットの肩を引き起こし、ロイドはゆっくりとかぶりを振る。
「そうじゃねえよ。ただ、約束を忘れてるんじゃないかと思ってさ」
「……やくそく?」
「俺が見せたら、コレットも……って、言ったろ?」
「あっ、そっか。そうだったね……」
求められている事が何であるかを悟り、コレットは納得した表情で頷いた。
伏せていた身体をふわりと起こし、シーツの上に膝を立てて座り直すと、後ろ手を突いて軽く胸を反らす。
「ロイド、これ……で、いい……?」
少し掠れた声で問いながら、閉じた膝をゆっくりと広げ、自ら進んでロイドの視線に全てを晒す。
溢れた雫は淡い茂みを肌に貼り付かせ、内股の半ばまでをも妖しく濡れ光らせていた。

「コ、コレット、お前、大胆だな……」
あまりにも素直に従ったコレットに、ロイドは気後れしたように呟いた。
良く知っているはずの少女の意外な側面と、初めて見る女性の身体の神秘に、目眩にも似た感覚がよぎる。
濡れた下草を透かして、中心にある亀裂の薄桃色が、鮮烈にロイドの視界へと焼き付いた。
「もう、ロイドが見たいって言ったからなのに。私だって、こんなのすごく恥ずかしいんだよ?」
「あ、そ、そうだよな。悪い……」
軽く唇を尖らせるコレットに、ロイドは小さく頭を下げた。
少しシュンとしたロイドの態度に、コレットは一瞬迷ってから、続けて口を開く。
「……ううん、いいよ。ほんとはね、ロイドが言ったからっていうのは、半分だけなんだ」
「半分……?」
コレットの言葉の意味が良く分からず、ロイドは首を傾げた。
自らの淫らな思いを告白する事に、コレットの胸に倒錯的な快感が込み上げてくる。
「もう半分はね……。恥ずかしいのとおんなじくらい、ロイドに私のここを、見て欲しかったから……」
「え……」
「ロイドに、私のここを、触って欲しくなってきちゃったからなの……」
言葉にする事で更に自覚を深めたのか、コレットはもじもじと腰を動かした。
閉じた花弁から透明な蜜が滲み、濡れた下腹部に新たな潤いが加わってゆく。
コレットの振り撒く甘い女の匂いがロイドの心臓を鷲掴みにして、反応した剛直がビクンと跳ね上がる。
「だから……ね? お願い、ロイド……」
また少し脚を開きながら、コレットは鼻に掛かった声で、ロイドに更なる愛撫をねだる。
食虫花に誘われた獲物のように、ロイドは甘酸っぱい芳香を放つそこへと這い寄っていった。

「これ……が、コレットの……」
「んうっ!」
大きく開いた脚の間に割り込んだロイドは、片腕を上げてコレットの秘所に手を伸ばした。
指先が表に出た襞の部分に触れると、コレットはきゅっと目を瞑り、官能に小さく身を震わせる。
唇よりも熱く滑らかな感触に、ロイドはほうっと息をつく。
燃えるような視線を股間に受け、コレットの背筋に甘い慄きが走る。
繊細な細工物を扱うようにそっと上下になぞると、ロイドの指にさらさらとした雫が纏わりついた。
「はぁ……。すげえな、こんなに濡れるもんなのか……」
「んふぅっ! ん……、んっ、ぁ……!」
「……でもこれ、どこがどうなってるんだ?」
もっとはっきりとした穴があるとばかり思っていたロイドは、指の腹を何度も往復させて、そこを確認した。
男を知らない入り口はぴったりと合わさったままで、経験の無いロイドには良く分からない。
だが、軽く襞を脇にめくると、その奥には同じような肉の連なりが続いていた。
「……コレット、ちょっと広げて見ていいか?」
「う、うん、いいよっ……」
顔を上げて尋ねてみると、大きく顎を引いてその様を見下ろしていたコレットは、切なげな表情で頷いた。
同意を得たロイドは、秘唇のすぐ外側に親指と人差し指を添え、慎重に亀裂を押し広げていく。
「う、わ……」
くぱっと湿った音を立て、閉ざされていた花弁は左右に分かれ、その内側の形を明らかにした。
包皮から頭を覗かせた陰核も、幾重にも折り重なった細かい襞も、鮮やかなまでのピンク色を示している。
コレットの呼吸に合わせてひくつく媚肉の妖しい魅力に、ロイドは軽く目を見開いた。

「ここに、入るのか……?」
「ん……っ!」
ロイドは広げていた人差し指を中指と入れ替え、空いた人差し指の腹でその場所を軽く押し込んだ。
コレットの秘洞はつぷっとロイドの指先を内部に受け入れ、同時にきゅんっと収縮して、きつく咥え込む。
「コレット、痛いのか?」
「ううんっ……。へいっ……き、だよっ……!」
強い抵抗にロイドが尋ねると、コレットはふるふると首を横に振り、か細い声で答えた。
瞳に浮かんでいる涙は、痛みの為なのか、興奮と刺激によるものなのか、ロイドには判別できない。
「痛かったら言ってくれよ。初めてで良く分からねえんだからさ……」
「うんっ……。ぁ……っ、ん! く、ふ……ぅん!」
コレットの身体を気遣いながら、ロイドはゆっくりと狭い肉の狭間を掻き分けていった。
湯の泉のように熱く、ぴったりと吸い付いてくる肉襞の感触に、ロイドの意識は虜になる。
敏感な粘膜を指先で左右に選り分けるたび、コレットの肢体が痙攣したようにびくっと震える。
ロイドは自分の指が膣内に沈んでゆく様を不思議な思いで眺めながら、指先を奥へ奥へと進めていく。
二つ目の関節の手前まで指を埋めると、ロイドはそこで一旦動きを止め、熱い息を吐き出した。
「はぁ、きついな、コレットのここ……。本当に痛くないか?」
「痛……く、ないよっ……。ただ、なんか、変な感じっ……」
コレットは自分の中に他人の指が入っているという初めての感覚に、それを上手く表現する事が出来なかった。
口内を舌で探られた時よりも、遥かに淫靡で激しい熱が、身体の奥をじわじわと侵食していく。
シーツを軽く握り締め、興奮に胸を弾ませながら、ロイドの顔と自分の秘所を探る手とを交互に見下ろす。
膣内は無意識のうちにロイドの指を求めて窄まり、逃がすまいとするかのようにしっかりと捕らえていた。

「それならいいけどよ……。少し、慣らしておいた方がいいのかな?」
「んっ、ん! あ、っはぁ、んぅっ!」
指一本ですらやっとと言った感じの内部を刺激に馴染ませようと、ロイドは挿入した指を左右に揺らし始めた。
締め付け自体はきつくとも、柔らかな内壁がその内側を取り巻いている為、僅かながら動かす余裕がある。
抵抗を無理に押し退けるような事はせず、ロイドは小さい幅で指を振動させて、コレットの中を解してゆく。
コレットの甘い喘ぎ声と共に、ロイドの指の動ける範囲は、少しずつ大きくなっていった。
「あっ、ねえっ、ロイドっ、上のほうも、触ってっ……!」
「ん? 上って、ここの事か?」
切なさのこもったコレットの懇願に、ロイドは左右に動かしていた指を反らし、内部の天井を軽く掻いた。
しかし、ぷるっと身体を震わせたものの、コレットは長い髪を揺らして、もどかしげに首を横に振る。
「んくぅん! そっ、そこじゃ、なくて……。その上の、お豆みたいなとこ……」
「ああ、これだな?」
「うっ、うん……。そこが、じんじんして、すごく切ないの……んんっ!」
ロイドが視線を移すと、コレットの陰核は包皮から露出し、刺激を待ち望んで硬く隆起していた。
そこに触れる為に掌を上に返すと、半回転する指に内部を抉られたコレットが、きゅっと唇を噛む。
少し肘を上げ、くっと親指を伸ばし、ロイドは指の腹で勃起した核心に優しく触れる。
「くううぅん!」
「こ……んな、感じで、いいのか?」
「うんっ! そう、いいのっ、それがいいのっ!」
指先で軽く丸めるようにしてそこを撫でると、コレットはガクガクと膝を鳴らして、強烈な快感に酔い痴れる。
反応した膣内がざわりと蠕動し、ロイドの人差し指を更に奥へと引き込んでいった。

              ◇  ◇  ◇

「ロイドっ、いい、よぉっ! あっ、私っ、すご……っく、んぅ、気持っ……ち、いいのぉっ!」
「はっ……はぁ、コレットっ……!」
コレットの人が変わったような激しい嬌態に引きずられ、ロイドの興奮はこれ以上ないほどに高まっていった。
親指を陰核に押し当てて、肘から先を細かく上下左右に動かし、膣内へ埋めた指先で奥を探る。
最初は痛いほどだった締め付けも、愛撫を続ける内に柔らかく蕩け、絶妙な具合に変化していく。
入り口から零れ出す蜜にはトロリと濁った粘液が混じり出し、音高い水音を立て続けた。
「私っ……! おかしっ、おかし……く、なっちゃ……うぅん!」
「ああ、俺も、おかしくなりそうだ……」
「んっ、ふ! んっ、はっ、あ……」
コレットは震える四肢を突っ張らせ、ロイドの手に押し付けるように、軽く浮かせた腰を小さく揺らしていた。
握った手と丸まった足の爪先がシーツに深い溝を刻み、伝い落ちた雫が大きな染みの隣に新たな点を増やす。
最後の一線を越える事を求めて、ロイドは大きく息を吐き、コレットの中から指を抜き取る。
すると、糸が切れたようにベッドへ腰を下ろしたコレットが、それを察して先に声を掛けた。
「はっ、はぁっ、ロイド……。もう、したいの……?」
「あ、ああ。……いいか?」
「いいよ……。たぶん今なら、ロイドのそれも、入ると思うから……」
はちきれそうなほどに張り詰めた剛直を目線で指し、コレットは自分の状態を正直に告げた。
知識は乏しくとも、身体がロイドとの確かな繋がりを求めて、完全に準備を終えているのは分かる。
動物の交尾の様子を思い出し、このままでは出来ないと勘違いしたコレットは、ベッドの上で物憂げに身を翻す。
ロイドに尻を向けて両の肘と膝をシーツに突くと、軽く腰を掲げながら、首を捻って後ろを振り返った。

「これで、いいんだよ、ね……?」
「え、あ、その、いいのかって……。コレットこそ、それでいいのかよ?」
初体験としてはいささか問題のある体位を求めるコレットに、ロイドはしどろもどろになって尋ねた。
シーツに突いた膝を大きく開いている為、秘所はおろか、その上の薄茶色の窄まりまでが剥き出しになっている。
扇情的な光景に、ロイドの本能は轟々と燃え盛り、理性の手綱を振り切ろうと激しく暴れ出した。
「うん……。ちょっとぐらい痛くても、私、我慢できるから……」
(そういう問題じゃねえんだけどな……)
噛み合っていない会話に、頭の隅でちらりとそんな事を考えるが、ロイドの我慢もかなり限界に来ていた。
コレットの知識の誤りを一々正してやれる程の余裕は、すでに無い。
多少のやましさを覚えつつも、ロイドはコレットの尻の前に膝立ちになり、反り返った剛直を押し下げる。
片手で細い腰を軽く引き寄せると、さっきまで指で確認していた入り口へと、滾る先端を導いていった。
「いくぞ、コレット……」
「うっ、うん……」
「ん、っと、あれ?」
ロイドは亀頭を花弁に押し当てると、そのまま腰を進めようとした。
しかし、開き切っていないコレットの膣口に入り込む事が出来ず、つるりと表面を滑ってしまう。
「あっ……ん! ロイド、入らない……?」
「いや、もう少しだと思うけど……」
不安そうなコレットの声に、ロイドは軽く焦りながら、再び先端を宛がった。
けれど、濡れた亀頭はくぬくぬと逃れるように歪むばかりで、どうしても中に入っていかない。
ロイドが何度も試していると、コレットは顔を俯けて脚の間を覗き込み、片手を自分の秘所へ伸ばしていった。

「じゃあ、こうしたら、どうかな……?」
コレットは二本の指を秘裂の脇に当てると、自ら大きく左右に押し開いた。
更に、意識して下腹部から力を抜き、膝をじりっと外側にずらす。
すると、そこに宛がわれていたロイドの先端は、吸い込まれるように肉の狭間へと滑り込んだ。
「んっ、お……!? 入って、くっ……!」
「っ……んぅっ、んんんんっ!」
柔らかい亀頭の部分さえ入ってしまえば、後は自然と角度が一致して、中へ進めるようになった。
ロイドは軽く重心を前に移し、コレットの狭い膣内へ静々と剛直を埋めて行く。
きつく、熱く、そして甘やかな内部の抵抗が、ロイドに強烈な快楽を与えてくる。
コレットも、破瓜の痛みに唇を噛み締めながら、崩れそうな身体を懸命に支え、それを受け入れる。
二人の腰がぴたりと重なると、ロイドの先端はまるであつらえたように、コレットの最奥に辿り付いた。
「コレット、やっぱ辛いか……?」
「そっ……な、こと、ないよっ……。私は、だいじょぶ、だからっ……」
ロイドが動きを止めてそう訊くと、コレットは心配を掛けまいと、痛みを堪えて気丈に訴えた。
しかし、初めて男性自身を迎えた秘洞は強く収縮し、彼女の苦痛を伝えてくる。
コレットの健気さに、愛おしさと少しばかりの水くささを覚え、ロイドの顔に柔らかな微笑が浮かんだ。
「無理すんなって。俺にぐらい、素直に弱音吐いてくれてもいいんだぜ?」
「あっ……。ロイド……」
ロイドは片手を突いてコレットの背に覆い被さり、もう一方の腕で胴を抱き寄せて、耳元に優しく囁いた。
密着した胸板から伝わる鼓動が、中に入り込んだ剛直のそれと重なり合い、コレットの全身に響いていく。
愛する者の腕に抱かれた安心感に、コレットの強がりは淡雪のように熔け去っていった。

「うん……。ほんとはね、ちょっとだけ、痛いかな……」
「じゃあ、このまましばらく動かないでいた方がいいか?」
コレットが遠慮がちに答えると、ロイドは慈しみを込めた声で問いを重ねた。
その雰囲気から、本当は動きたがっているのを敏感に感じ取り、コレットの胸に申し訳なさが広がる。
「ううんっ、ほんとに、ちょっとだけだから……。ロイドの、したいようにして……」
「俺が、そうしてやりたいんだよ。コレットにあんまり辛いこと、させたくないからな」
「ん、うん、ごめんね、ロイド……」
「だから、気にするなって」
ロイドはそう言って、子供を宥める時のように、コレットの脇腹をポンポンと叩いた。
そのままコレットの身体を緩く抱き締め、彼女の中が異物に慣れてくるのを、静かに待ち続ける。
ロイドの労わりに胸を打たれ、泣きたくなるほどの幸せと温もりが、コレットの身体を支配してゆく。
コレットが大きく息を吐くたびに、下半身からは余分な力が抜け、それと共に痛みは遠のいていった。
「ん……、ロイド、もういいよ、動いて……」
「そうか? 我慢しなくてもいいんだぞ?」
振り向いて小さく告げてくるコレットに、ロイドは念を押すように確認した。
締め付けの具合が変化してきたのは分かるが、それでもコレットの中は狭く、自由に動けるほどの余裕は無い。
「我慢して、ないよ。だいぶ、痛くなくなってきたから……」
「……分かった。じゃ、ゆっくりな……」
「んっ、ん……」
コレットの身体を気遣いながら、ロイドは優しく腰を揺すり始める。
白い尻肉が腹筋に押され、少し硬めの弾力を返しながら、動きに合わせて小さくたわんでいった。

「どうだ、コレット……?」
「っうん、平気、みたいっ……。そんなに、痛く、ないっ……ん!」
自分の中でゆったりと動く剛直を強く意識しながら、コレットは小さく頷き、ロイドの声に答えた。
時折、引き攣れるような痛みが走るものの、天使化が進行した時の激痛に比べれば、大した事はない。
ましてや、大好きなロイドと愛を交わしているのだと思えば、その痛みすら嬉しく思える。
その想いに準じるように、コレットの膣内はますます潤みを増し、肉襞はロイドの剛直に絡みついていった。
「んくっ!?」
「悪い、今の、痛かったか……?」
最奥の硬い肉壁を先端でこじったロイドは、コレットが息を呑むのを見て、僅かに腰を引いた。
余す処無く取り巻いた襞が、雁の裏をずるりと舐め上げて、痺れるような快感を引き起こす。
「違うの……。今、お腹の奥が、じんっ、ってして……」
コレットは要領を得ない面持ちで、自分を襲った感覚をつたない言葉で言い表した。
身体の奥深い処で、快楽には成り切れない情動が、余韻となってコレットの意識に波紋を投げかける。
「痛いんじゃなくて、なんか、くすぐったいような、むずむずする感じで……」
「良く分からねえな……」
「うん、私も、良く分かんない……。けど、嫌な感じじゃ、ないから……。んっ、ふ……」
背後のロイドを横目に見て、コレットは軽く腰を突き出し、先程と同じ刺激を求める。
内臓を押し上げられる感触と共に、ロイドの剛直がドクンと脈打ち、その振動にコレットの腰がわななく。
「ロイド、続けて、……いいよ?」
「ああ……。く、うっ……」
「ん、んぅ……っ!」
求めてくるコレットの背に身を寄せ、ロイドは細かく下半身を揺らして、彼女の最奥を探っていった。

「くっ、はぁ、うっ、すげ……っ!」
「ん、ふっ、んん、っうん!」
小刻みにコレットの中を突き上げながら、ロイドは凄まじい快楽を生み出す締め付けに、思わず声を洩らした。
ゆったりとした動きでも、ぬめり気を増した膣内は充分過ぎるほど心地良く、自然と息遣いが荒くなっていく。
コレットの喘ぎからも次第に苦痛の歪みが薄れ、僅かながら甘い響きを帯びてくる。
波のようにうねり、剛直全体を舐め回す肉襞のざわめきが、ロイドの射精を急速に促して来た。
「コレット、俺っ、もうっ……!」
「んふぅ! ん、ロイ、ドっ……!」
「駄目だっ……! 俺、出ちまうっ……!」
「んっ、ロイ、ド……、あぁっ、ロイドぉっ……!」
ロイドはすりこぎのように腰で円を描き、先端を子宮口へぐりぐりと押し付けて、最後の快感を貪った。
コレットの胴に廻していた手を滑らせると、たふたふと揺れる小振りの乳房を包み込み、ぎゅっと抱き締める。
自分の名を繰り返すコレットの声と、ひくつく媚肉に誘われて、溜まり切った欲望が剛直を駆け上がる。
「コレッ、トっ、うっ……、くううぅっ!」
「あっ!?」
コレットの背に縋りつくようにしながら、ロイドは大量の精を膣の奥底に解き放った。
びゅるびゅると吐き出される白濁が、亀頭と肉壁の間に溢れ、えも言われぬ開放感をロイドに与える。
「くはぁ、はっ、はぁ、はぁっ……」
「あ……。ロイド……」
内部に注がれた精の熱さと、ビクビクと痙攣する剛直の感触に、コレットは脱力したロイドの方を振り返る。
満ち足りた表情をしたロイドの顔を見て、コレットの胸に染み入るような女の幸せが込み上げていった。

              ◇  ◇  ◇

事が終わった後、ロイドは裸のまま仰向けに寝転がって、快楽の余韻に乱れた息を整えていた。
その横には、こちらも裸のコレットがぴたりと寄り添い、肩に頭を預けている。
触れ合った肌の温かさを夢見心地に堪能しながら、コレットの長い髪を指先で掬ってはサラサラと流していく。
胸の動悸が収まってきた処で、ロイドは気持ち良さそうに目を閉じているコレットに、そっと囁きかけた。
「……コレット、まだ痛いか?」
「んーん。ただちょっと、まだ入ってるみたいな感じがするだけ……」
薄目を開いたコレットは、安らいだ声で答えながら、ロイドの肩に頬をすり寄せた。
ちらりと目線を下に落とすと、はにかむような笑顔を浮かべる。
「それとね、ロイドの出したのが、お腹の奥でにゅくにゅくして、なんかくすぐったい……」
「う、あ、悪いな。そこまで気が回らなくてさ……」
「別に謝らなくてもいいよ。私、とっても幸せな気分だから……」
コレットはロイドの胸板に這わせた手で、その存在を確かめるように撫でながら、小さく身じろぎをした。
自分の中に残されたロイドの証が、とても愛しく、心地良い。
そこである事を思い出し、コレットは再びロイドの顔を振り仰ぐ。
「……あ、そういえば、これって赤ちゃんの素なんだよね?」
「ん、ああ、まあな……」
「じゃあ、もしかしたら、今ので私とロイドの赤ちゃんが出来るかも知れないね?」
「うっ、そっ、そうだな……」
初めての体験に対する興奮ですっかり失念していたが、言われてみれば確かにその可能性は充分にある。
コレットの率直な問いを受け、ロイドは今更ながらに動揺した。

「あー、ロイド、困った顔してるぅ……」
コレットはロイドの顔に手を伸ばし、また赤味を増してきた頬をツンツンとつついた。
からかうような笑顔を眩しく感じ、ロイドはスッと視線を脇に逸らす。
「い、いや、だってよ。この年で親父になる自信なんてねえし、それだと予定が……」
「予定?」
「う、っと、その……」
思わず舌を滑らせかけ、ロイドは慌てて口をつぐんだ。
ロイドはこの旅が終わったら、今度は世界中のエクスフィアを回収する旅に出ようと思っている。
そして本来ならば、それが一段落してから、コレットにきちんとプロポーズをするつもりだったのだ。
しかし、思いがけず順序が入れ違ってしまった為、まだ心の準備が出来ていない。
その態度から、珍しく女の勘を発揮したコレットは、顔をほころばせてロイドの顔を覗き込んだ。
「ふふっ。ロイド、予定ってなあに?」
「え、えーとな……。とりあえず、その時になったら話すよ」
「え〜、そんなのずるいよぉ。ねっ、今教えて?」
「だっ、だから後で話すって!」
ロイドはますます慌てた様子で、ベッドの上から起き上がろうとした。
しかし、コレットは照れるロイドにきゅっとしがみ付き、その動きを引き止める。
「だ〜め! 教えてくれるまで、離してあげないもん!」
「コッ、コレット! お前、分かってて言ってねえか!?」
「えへへっ。ロイドがちゃあんと言ってくれないと、分かってあ〜げないっ♪」
腕から逃れようとするロイドの体に乗り上がり、コレットは甘えた口調で続きを求める。
無邪気に戯れる子犬のように、二人はしばらくベッドの上で、微笑ましい攻防戦を繰り広げた。

〜END〜


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