総合トップSS一覧SS No.2-086
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 メロンホイップ氏 チェスター×アーチェ 2005/02/07 2005/02/07

常闇の街・アーリィのロビーにて。
明日は、ダオス城に乗り込む。今は、決戦前夜だ。
クレスとミントは−−外に出ている。
クラースはさっさと部屋にいってしまい、すずはいつの間にか姿を消してしまった。
今宿屋に残っているのは、チェスターとアーチェ、二人だけである。
しかし、二人きりになっても、素直になれないのが彼等である。
「ねえ、チェスター、あんた、明日大丈夫なワケ?」
「はっ、お前ごときに心配される程、俺はヤワじゃねえんだよ」
「むかっ…ちょっと、お前『ごとき』って何よ!?人が折角心配してあげてるのにっ!」
「はぁ?お前、人の事心配してる暇があったら、自分の胸の心配でもしたらどうだ?『ぺったんこ』め」
「なっ…何よその言い草はっ!?そんな事言うんだったらあんただって『スケベ大魔王』じゃないのよっ!」
「ぐっ…」
まるで子供の様な口論であるが、チェスターはそれ以上何も言えなくなり、口をつぐんだ。
一時の間、沈黙が流れる。
暫くして、アーチェが口を開いた。

「ねえ、チェスター、あんた前から、あたしに突っかかってばっかいるけど、あたしの事…
…嫌いなの?」
不安そうにアーチェが訪ねる。
「ばっ…馬鹿野郎!俺は初めて会った時からお前がっ…!」
「!!」
「!!」
再び二人を沈黙が襲う。チェスタ−は自分の言動に慌てふためき、アーチェも驚愕の表情だった。
「初めて会った時から…何?」
「何って…それは…その…」
アーチェの問いかけに、チェスタ−は返事に困ってしまう。
「あのさ、前から思ってたけど、あんたもっと自分の言いたい事はちゃんと言いなよ。自分の気持ちにもっと素直になろうよ」
チェスタ−に詰め寄りつつ、アーチェが呼び掛ける。
「でっ…でもっ…」
「いーから言うっ!黙っててもチャンスは訪れないわよっ!」
「そっ、そんな言われても…」
チェスタ−はまだ慌てている。言葉が喉に詰まって出てこない。
「やれやれ… 様はこういう事でしょ?」
「こういう事って、どう言う…んっ!?」
問答無用で、アーチェはチェスタ−に口付ける。アーチェのいきなりの大胆な行動に、チェスタ−は動揺を隠せない。

(わわわわわっ、アーチェ、こんな所で!?)
チェスターの気持ちをよそに、アーチェはキスを続ける。
やがてアーチェの舌がチェスターの舌に絡み付く。
数十秒しただろうか、アーチェはやっと唇を離した。
「要するに…こういう事でしょ?」
「ばばばばば馬鹿野郎!いきなり何を−−」
「…あんた、鈍いしいつまで経っても言わないから先に言うけど、あたしはチェスターの事が好きなのっ!」
「!!!」
アーチェは顔を真っ赤にしつつも思いきって告白する。いきなりの告白に、チェスタ−は驚愕してしまい、言葉が出ない。
「そっ…そんな事、わざわざここで言わなくても…」
「…あんたはどうなの、チェスター?あんただけ言わないってのは、なしだからね」
「そ、そんなの…
…いきなり言えって言われても、言える訳ねえじゃねえか…」
どぎまぎしながらチェスタ−が応える。
「じゃあ、あんたがもしあたしの事好きなら、
…夜、皆が寝た頃、あたしの部屋に来てくれる?」
いかにも、行けば何が始まるのか、予想出来るような、甘い声だ。
「………………」
アーチェの言動に、チェスターは困惑してしまっている。
「それじゃ…あたし…待ってるから」
そう言い残すと、アーチェはさっさと部屋に戻ってしまった。

ロビーに残されたチェスタ−は、一人きょとんとしていた。
やがて、クレスとミントが帰ってくる。
「あれ…チェスタ−、どうしたの?」
「いや…何でもねえ…」
ロビーに一人立ち尽くして居たのが不自然だったのだろう、クレスが訪ねた。
「そう?何かあったなら素直に−−」
「何でもねえったらねえんだよ!お前らはもう寝ろ!じゃあな!」
「チェスタ−、ちょっとまっ…」
とうとうチェスタ−は怒り出し、そそくさと部屋に戻ってしまった。
クレスとミントは、何があったのか分からないと言った様子で、呆然としていた。
「…チェスタ−の奴、どうしちゃったんだろ?」
「さあ…私には、分かりません…」


〜 アーチェの部屋 〜
(何言ってんだろ、あたし…)
部屋に戻ったアーチェは、一人考え込んで居た。
(あんな奴に、「好き」なんて言っちゃって…)
いくら雰囲気が良かったからと言い、あんな事を口走ってしまったことを、アーチェは恥じると同時に、−−嬉しくも思っていた。
今更言うまでも無い事だが、アーチェはチェスタ−の事が、どうしようも無い位好きなのだ。
旅先で、チェスタ−を想いつつ、自分を慰めてきた回数は数知れない。
その想いを、やっと今、チェスタ−に打ち明ける事が出来たのだ。−−そう考えると、アーチェの感情から恥じらいが消えた。
「きっと来てよ…チェスタ−…」
誰もいない部屋の中で、誰にとも無く、アーチェは呟いた。


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