総合トップSS一覧SS No.3-023
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
記憶交錯 潤氏 スタン×ルーティ 2005/04/29 2005/04/29

「……スタン?」

木の香りがする、セピア色でまとめられた古めかしい孤児院。其処で「母親役」のような存在であるルーティ。
四英雄の1人として今も世界の尊敬を受け、語り継がれる歴史の重要な人物である。

…だが、本人は至って気取らない元気な女性だ。きっと「憧れ」とやらを持つファンにも
何も気取らずすべてを話してしまい、「ファン」を「友達」に変えてしまうのだろう。

辛い事があっても元気に見え、それは空元気では無いし無理をして笑っている訳でも無い。
ただ辛い事を辛いと言ってしまえばもっと辛くなると知っているだけだ。
だから彼女は何があっても挫けずに誰かを励ます側にまわる。
優しい微笑みで、大丈夫だと言い聞かせ――同時に、自分にも言い聞かせながら。

そんな彼女が珍しく表情を暗くさせ、今にも泣きそうな声で走っている。
表情を不安にさせたさっきから、彼女の口からは1つの単語しか出ていない。

「スタン……」

愛する夫の名。共に四英雄として数えられつつ――いや、彼こそ英雄と言うべきか。
ルーティと同じように、彼の場合はその度合いがもっと酷く「人間」だ。
未だに治らない寝坊癖と大らか過ぎる性格。だが、人々は「それくらいが英雄なのだろう」と暖かく笑う彼をそう言うのだ。

「何処行ったのよ……っ!」

ぽろ、とルーティの瞳から涙が零れた。気丈な彼女の涙は珍しい。髪が乱れるのも構わず走り、スタンを探す。
つい2時間程前に旅立ったカイルが忘れていったグミを届ける、と言って追いかけていったスタン。
それきり帰ってこない――いや、ラグナ遺跡に行ったであろう2人を追いかけたならば不思議は無い。
意外と遠いし、ラグナ遺跡の奥まで追いかけていれば1日はかかるだろう。
それを知っているのに、ルーティは「何処へ行ったのか」と涙を流しながら追いかけているのだ。

それは、今ラグナ遺跡で起こっている事の――影響だった。

「リア……ラ?」

記憶を取り戻す事。「存在しなかった事になる」と言っても、魂が1度経験した事は
何かの拍子で戻ってしまう事があるのだ。奇跡に近いが、もしもそれに「スイッチ」があれば簡単に出来てしまう。
それが、リアラの存在。それこそがスイッチなのだ。

もう1つの「未来」では、ルーティはスタンを亡くしている。あちらでは気丈に微笑んでいたが、今の未来ではスタンはいつもルーティの隣に居たのだ。
生半可な「居る」と言う感覚、そして「スタンを亡くしていたこと」をぐちゃぐちゃに思い出し、混乱している。
今のルーティの中で「スタン」は、「居るのに」「死んでいる」「目の前で殺されて」「居たのに」と言う単語の混ざり合いで、本人を見なければこのまま頭から壊れてしまいそうだった。
だが、何処を探せどスタンの姿は見えない。生半可に引き出された記憶の中で1番鮮明な、
青いウェーブのかかった髪の男に殺されるスタンの姿が頭の中でいっぱいになる。

どれくらい走ったのだろうか、ルーティはついに泣き崩れそうになって膝をついた。
先程少し降った雨の所為で、草は少し濡れていたがそんな事は気にならない。
もしかしたら。切られていて、スタンはもう居ないのかも知れない。その記憶の方が正しいのかも知れない。
すべての記憶に自信が無くなって、ルーティは泣き叫んだ。

「……スタ……ン……!」

声に出した事で涙が溢れ、ぼろぼろと頬をつたって地面に落ちた。
はたして彼は本当にさっきまで居たのだろうか?それとも既にとっくに……?
頭がおかしくなりそうな混乱の中で、ルーティの理性を取り戻す音が聞こえた。


「……ルーティ」

ガサガサ、と言う木を掻き分ける音と共にスタンがルーティへ近寄る。
密度の濃い森の中で出会えた事が既に奇跡に近い事だった。
だが、そんな事はルーティの頭に入らない。スタンが居たと言う喜びと――「死んでしまった」記憶通りの場所から、血を流している事。
ルーティがただただ絶句していると、スタンは唇を開いた。

「……俺、死んでたんだな。もう1つの未来で」

普通の人間にしてみればよく解らない台詞だ。だが、ルーティには心のつっかえを取るように効いた。
探していた人から、「もう1つの未来」と言う言葉を聞いたのだ。
自分だけの勘違いではない。そうだ、もう1つの未来が確かにあっただけなのだ。
その中で確かにスタンは死んだ。だが、可愛い息子の活躍で世界は救われ――今に居る。

急激に戻る記憶。そして、自分が「幸せの未来」へと辿り着いているのだともう1度悟る。
それは、もう1つの未来を生半可に思い出したからこそ感じる事なのだろう。

「……良かっ……」

それだけで言葉は途切れ、ルーティはスタンに縋って泣いた。
きっとスタンの怪我はとても浅い。彼の場合、「記憶」の中に「死」があった。
だが本来の未来を生きている者に「同じ死の怪我」が戻る訳は無い。
だから、出血は酷いがきっと浅い怪我だ。それが解って、ルーティは更に泣き、そして微笑んだ。

「…………生半可に戻ったから」
「でも、俺達のカイルが取り戻してくれたんだ。こっちに来れて良かったよ」
「……そうね」

やっと涙が少しひき、2人が傷を癒す為に木に凭れつつ言葉を交わす。
空は満点の星空で、孤児院の子供達が気になるが賢い子供達はきっと今頃眠りについているだろう。
それよりも、温かく幸せなこの未来を感じていたかった。

「ルーティは多分、今の方が凄く綺麗だ」
「あんたが死んだ時の方が若いのに?如何して今」
「俺が居れば、ルーティはずっと綺麗なままだろ。居なくても綺麗だったけど、やっぱり」

茶化しながら2人で笑う。きっとお互いが居ればどれだけ年をとるのも怖くないな、と考えつつ。

「それに……ここ」

少し血を無くし、冷えたスタンの指がルーティの唇を撫ぜた。軽く引かれたルージュに沿って、ゆっくりと。
ぴくりと身体を震わせたルーティには、すぐにその意味が解った。
色気がある。そう、今のルーティには色気があるのだ。それはやはり男性との交わりがあってこそ出るものがあるから。

スタンとの交わりを重ねれば重ねるほど出る色気。何度も貪られた唇、張りのある胸。しなやかにのびた手足も何処か薄い光を帯びる。
そして1人しか受け入れてこなかった秘所は、敏感に身体の中心として未だ綺麗なままだ。

「……したい」
「怪我してるでしょ」
「でも目が色っぽいから我慢しない」

子供のような会話をしているのに、スタンの手は既にルーティの胸に柔らかく触れていた。
ハリを失わないのは揉んでいるからなのか…と思いつつ機敏に快楽を導き出す。
強弱を付けて頂点に触れるか触れないかのところへ行く指先がもどかしく、ルーティは息を吐いた。
服を脱がすと、崩れないプロポーションが白く光って露になる。
スタンはやっぱり綺麗過ぎて見慣れないなぁ、と思いつつもゆっくり触れていった。

焦らすような愛撫が幾ら続いただろうか。甘く甘く触れる指先にもどかしさを感じるたびに、
ルーティの秘所がじくりと濡れていった。開かれ切った身体は甘く指を受け入れ、
舌の熱さをそれ以上の熱さをもってかえすものとなっている。

「……ルーティ」

スタンが身体を舐めていた舌を離し、唇についた液体をぺろりと舐めてからキスを求めた。
優し過ぎるくらいの英雄。それは何時でも変わらないのか、挿れるときにはいつもキスをする。
まるで初体験の時相手を気遣いながらするみたいね――身体を重ねる何度目かの夜、
あまりに甘い愛撫といつまでたっても初体験のような気遣いをするスタンをコロコロとルーティが笑った事があった。
それでも、それを嫌がらないのはルーティがそれを心地いいと思うのを知っているからだ。
中々に壮絶な半生――いや、本人は「そんな事無いわ」と笑い飛ばすが、辛い事のあった道だ。
だからこそ、スタンは有りっ丈の優しさでルーティに触れた。もう暖かさを失わないように。

「良いわよ」

ふっと笑んだルーティは艶っぽく、ドクリとスタンのものが脈打ち大きさを増した。
それでもやはり無理矢理ではなくゆっくりと身体を開き奥まで達する。
とろとろに溶けた内壁からすれば、スタンのモノはとても熱いのだが其方にしてみればルーティの内壁は
液を絡ませた熱い熱いどろどろのもので、お互いがお互いを火傷させそうなほどに熱い。
やんわりとルーティがスタンの存在を確認するように締めると、スタンは熱い吐息を吐いた。

動かなくても果ててしまいそうだ、と思いながらゆっくりと腰を動かし始める。
たっぷりの柔らかさとどろりとしたどちらのものか解らないそれ。
締め上げるごとにスタンは少し声を漏らしながらルーティを突き上げる。

「ん、ぅっ……んんっ」

不規則な腰の動きでルーティから声があがり、最奥を突かれる感覚で頭がくらくらした。
森の中だと言う事を気にしているのか、唇を噛んで声を抑えるルーティ。
スタンはそれに気付くと唇ごと噛み付くようにキスをする。

熱いスタンのものをまるで液体のようなルーティの中が包み込み、
1つになっている結合部からはぐじゅりと液体が漏れた。

「も、うっ…ぁああああっ!!」

「あー……」

ずんっと最後に奥を叩くと、ルーティの中でスタンが爆発した。
真っ白く弾けたそれが脳内にまで達するようで、荒れる息と共にスタンはルーティの胸に倒れこんだ。
柔らかい胸がふにゅりと形を変えてスタンを優しく休ませる。

「……気持ち、い……」

はぁ、とため息を吐きながらゆっくり言葉を吐き出したルーティ。
さらりとスタンの金髪に指をとおして、存在を確認した。

居る。

解ってしまえば何とも簡単なそれは、記憶の交錯の中で錯乱を生んだ。
だがもう迷えないのだ。だって、未来は今ある1つだけなのだから。

「……カイルに、感謝しなくっちゃね」

断片的にしか思い出せない記憶。だがそれで良い。
愛する人は此処に居るし息子も今ごろ大切なものを見つけたのだろう。

風邪をひくのだろうな、と思いつつもルーティは一足先に眠りに落ちた夫を撫でた。
帰ったら息子を何の理由も無く褒めてやろう。きっと自分が記憶を断片的に取り戻したなんて
言ったってしょうがない。今ある未来を大切にせねばならない。
それでもやっぱり、今あるぬくもりをくれたのは息子なのだから、褒めてやろう。
もう父親に負けないくらい英雄の名に恥じない少年なのだから……。

褒めた後の夕飯の献立まで考えようとしたが、ルーティはそのまま眠りに落ちた。
朝になっても消えないであろうぬくもりを撫でながら。


前のページへ戻る

テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル