総合トップSS一覧SS No.3-065
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
無題 888氏(13スレ目) セネル×クロエ 2005/08/29 2005/08/31

「……こんな時間に用事って……何、クロエ?」
「そ、それはだな……その」
2人っきりで色々話したい。……それをなかなか言い出せずにうじうじするクロエと、それを見つめる碧の瞳。
彼は、彼女が言葉を紡ぐのをワクワクした様子で待っている。
そしてもう一人……木陰で息を殺している……トレジャーハンター。
「……(セネセネに何する気よ……下手なことしたら……)」
眠りに就く前、たまたま一緒の2人を見つけて、何でかわからないが急いで隠れたノーマ。
よく聞こえないが、自分には面白くない事だろう。そう思って黒い視線を送る。

そんな外野のことには微塵も気付けない程緊張している、クロエ。
「え〜と……その……うむ……(……話しかけたのはいいが、どう切り出そう……)」
普段は想いを隠すため、ぶっきらぼうに振る舞っているので(誰かどう見てもバレバレなのだが)肝心な時に会話が思いつかない。
何とか落ち着いて、無理やり口を動かしてみる。
「た、たまには……だな?」
「うん」
「ふ……(2人っきりで話でも……よし!)……ふ、ふ、フタリッキr」
力み過ぎて声が裏返ってしまった。恥ずかしいので喋るのを止めたが、逆にまた静寂が訪れる。気まずい。
「………………(あぁ……私の馬鹿者……)」

それを破ったのは、彼。
「クロエ」
「は、はひっ!?」
間抜けな声を気にせずセネルは続ける。何故か満足げに微笑んでいるのが少々気になるが。
「いい機会だし、軽く手合わせでもしないか?……2人で」
「えっ……あ、あぁ……」
彼の口から出た言葉は、クロエにとって嬉しさ半分、悲しさ半分だった。
普段が普段だから自分など女の子として見られていないのかもしれない、と思うとショックだったが、
2人っきりになりたい、という彼女の希望をちゃんと満たしている。
結局セネルの言う通りにすることにした。ちょうど近くに林で囲まれた空き地があったのを思い出し、2人で向かう。

「ちょっと……どこ行く気よ?!」
遠くから見ていたノーマもすかさず後を追う。

もう少し進めば空き地、という所で、前を進んでいたセネルが足を止めた。辺りは2人の背丈を楽に越す雑草群。
「どうした、クーリッジ?」
まさかこんな所で手合わせなんてしないだろう、と思って聞くクロエ。セネルはというと、今来た道をじっと見ている。
そういえばここまで歩いてきたが、やたらと後方を気にしていた様子だったなと思い、彼にならって奥を注視する。
「……ッ!?なっ、あ、あれは……!」
見慣れた黄色の布地を確認する。林に引っ込んだが、見間違うはずがない。ノーマだ。
「何故……つけられていたのか!?」
「みたいだな」
「みたいだな、って……クーリッジ!こういったことは気付いたら言え!!」
「何か問題でもあるのか?」
「ッ……それは……その……」
ツーショットを見られるのが恥ずかしい、なんて死んでも言いたくない。だが。
「2人っきりなのを見られると恥ずかしい?」
「!」
見事的中。こういうときのクロエは見ていてとても可愛い、とセネルは思う。
かわいそうなほど真っ赤でわなわな震えながら、子供のように必死で反論する。
「だ、だだ断じて違う!!」
「はは……ごめんごめん」
「うるさい!ばっ……バカにするな!大体…………………」


一通りまくし立てた後、どうしたものかとクロエは考える。
とりあえず、セネルが黙って文句を聞いてくれたおかげで冷静さが戻って来た。
まずはノーマをどうにかしよう。話はそれからだ……と方策を練っていた途中だった。
「ふぇ?」
体が浮いた。


「あぶないあぶない……私としたことが……」
ノーマは林にすっぽり隠れていた。さっきは覗いているのが2人にバレそうになったため、慌てて突っ込んだのだ。
もう気付かれてしまっただろうか?とも考えたが、
しばらく経ってもこちらを探すような気配は無かったから、バレていないのかもしれない。
とりあえずもう一度二人を確認しようと顔を出す。だか……
「……いない?!」
先に行ってしまったのだろうか。これはマズい。2人の目的が分からない以上、見失う訳にはいかなかったのだが。
…………もしかしたらもう手遅れ(何が)なのでは…………
頭によぎる嫌な想像を吹っ飛ばし、ノーマは駆け出した。
「セネセネ〜!!早まんないで〜!!」

大急ぎで走り去っていくノーマを林の中から見送った後、セネルはクロエの方に向き直った。ひどく火照った頬をしている。
「行ったみたいだ……」
「クーリッジ……」
「ん?」
「か、隠れるためとはいえ……そのだな……いきなり」
「お姫様だっk」
「うわぁぁぁああ!?!!み、みなまで言わなくてもいいから!!」

ノーマの走る去る直前のこと。
クロエが浮揚感を覚えると同時に、セネルの顔が目の前に出現した。それこそ、鼻と鼻が触れ合うほどの場所に。
「???!!!???!???!?!!!!」
「隠れるよ、クロエ……」
そのまま今の状態につながる。ちなみに、彼はどんどん近寄って来ている最中だ。
「く、くくくクーリッジ?!近い近い……!!」
「俺はもっとクロエの近くがいいんだ……」
「近すぎ……って、……え?」
また鼻と鼻がぶつかる。互いに見つめ合って目を逸らすことが出来ない。吐息が重なり合う。
「……こんなのは、駄目か……?」
「い、いや……というか……そう、て、手合わせはどうなっ……」
「こうするための口実さ」
「!……し、しかし」
クロエの恥じらう様子に、セネルの理性は吹っ飛びそうになるものの、何とか耐える。

未だ状況を理解しきれていない彼女のために、息を大きく吸い目に力を込め一言放つ。
「俺……セネル・クーリッジは、クロエ・ヴァレンスが好きだ」
「な!?い、いきなりな……んうっ!!」
彼女の言いたかった言葉はセネルの唇によって遮られてしまった。と、彼は顔を離す。
「本当にいきなりでゴメン……でも、これが俺の気持ちだから」
「…………」
……物足りない。彼女の中で抑えきれそうにない感情が首をもたげ始める。
もっと。もっともっと。愛しいあの人を感じていたい。

次の瞬間、今度はクロエから口づけた。
意外な積極さに驚いたセネルだったが、すぐに彼女を受け入れた。互いに夢中で舌を絡ませていく。
「っは……むぅ……クロエ……可愛いよ……」
「んっ……くぁ……れろ……クー、リッジ……」
貪るように唇を求め合う。拙い動きが、やけに耳に絡む水音が、2人を煽る。

どの位そうしていただろうか。一際激しく舌を絡ませ合った後、顔を離す。
間に伝う銀色のアーチを見て、赤面するクロエ。
そんな様子に本能的なさっきの姿とは別の魅力を感じたセネル。
思わずぎゅっ、と抱き締める。今更だがまんざらでもないらしい。彼女は全てを委ねてくれた。

「なぁ、クロエ……」
「な、何?」
まだぎこちなさはあるが、悪意は感じられない。セネルは続ける。
「その……名前」
「?」
「今度から2人っきりの時は、さ……『セネル』って呼んでくれないか?」
「……!」
不意に固まるクロエ。しばらく待ってみたが、なかなか反応がない。
やっぱダメか?とセネルは少しガッカリした。……が。
「……わかった」
「!……ありがとう、クロエ」
「でも……」
「?」
「うん……えぇと……私を見つめてくれないか?」
「あ、あぁ……(どうしたんだ……?)」
言われたまま視線を落とす。
「!(こ、これは……たまらん……)」
クロエは余程考え込んだのだろうか、瞳を若干潤ませてこちらを見ている。
……俗に言う女性の最終兵器の一つ、『上目遣い』である。
「クーリッジ……いや、せ……セネル」
「あ、は、はい!」
魅入ってしまっていたため間抜けな返事を返してしまった。
クロエは大好きな人を見つめながら、続ける。
「私を……あっ、愛してくれている……か?」
「!……じゃなきゃ、その……きっ、キスなんてしないさ!」
「ちゃんと聞かせて……」
「…………好きだよ。誰より、何より……愛してるよ、クロエ……キミを」
「嬉しい…………私も、だよ、セ……ねるぅ……」
叶うはずがないと思っていたことが今、確かな形となって目の前にある。
感極まったクロエは、セネルの胸にしがみついて泣き始めてしまった。

泣いているクロエを優しく包み込むセネル。何も邪魔するものはない。
獣一匹どころか、風にそよぐ草の音もせず、2人だけの時が刻まれていく。
どの位そうしていただろうか。ようやく泣きやんだクロエは、目を腫らしてばつが悪そうな顔をセネルに向ける。
「すまない、取り乱してしまって……」
「いや、いいんだ。また……クロエを知ることができたし」
「フフ……馬鹿者……」
そっと瞳を閉じて、改めて彼に体を任せる。
「ずっと……こうしていたい……」
「俺も……まぁ、これからはいつでもできるさ」
「……みんなの前でも?」
「……クロエがそうしたいなら」
「なっ……わっ、私が、そんな、セネルといちゃいちゃするところなんて、自慢したがるわけがないだろう!?」
したいしたい、と言ってるようなものだと、本人は全く気付いていない。
こういうところがまた、彼女の魅力なのだが。思わず吹き出すセネル。
「はは……」
「なっ!セネルっ、ち、違うんだからな!!決してそのようなことは……」

「へぇ〜……普段からいちゃいちゃしたいんだ……セネセネと……」
「?!」
「だから違うと…………あ!!」
いつの間にか、抱き合いながら座る2人の正面にノーマがいた。さも面白くなさそうに見下ろしている。
「いっ……いつから!?」
「どんなだったか知らないけど……取り乱した、っていうことは……セネセネ、随分とテクニシャン(『何の』かは謎)なのね?」
どうやら殆ど見られていたらしい。
2人だけの世界に入っていたセネルとクロエは、全く気付くことなく『見せつけて』しまっていたのだった。
「と・に・か・く!なかなか見応えあるシーンだったわよ〜……
『みんなの前でも?』『クロエがそうしたいなら』……だって!!2人ともかぁ〜わゆ〜い!!」
慌てふためく2人を後目に盛り上がるノーマ。しかし、目は据わっている。……何か企んでいる証拠だ。
「……みんなに教えちゃお〜!!」
「「ええっ?!」」
次の瞬間にはノーマの姿は無かった。
帰ったら……と思うと頭が痛くなる2人だった。

しかしそのおかげで『どうせならもっといちゃいちゃしよう』となり、結局2人仲良く朝帰りになったのだが、それはまた別の話。


糸冬


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