総合トップSS一覧SS No.5-017
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
あらはすは、想い。きたるは、花 水王氏 ルーク×ティア 2006/01/15 2006/01/16

<状況説明>
・ED後、色々あって駆け落ち同然で家を飛び出したルークとティアに後を追っていたガイが合流



「遠路遥々、よく尋ねて来てくれたな。英雄殿」
 マルクト帝国・首都グランコクマの宮殿内部。
 その謁見の間に聞く者に威厳を感じさせ、尚且つ緊張感を伴わなせない相変わらずの声が響く。
「その、英雄ってのはやめて頂け」
「陛下におきましては、ご機嫌麗しゅう存じ上げます」
「堅苦しい挨拶はいい。それよりも今は旅で疲れた身体をゆっくりと休めるといいだろう。部屋を
 空けてある。ガイラルディア伯爵、早速案内してやれ」
(・・・やっぱ、俺この人苦手だ。)
 ピオニー、ティアの二人に顔色一つ変えずにスルーされて、ルークは胸中で呟く。
 ガイとの合流後、彼の提案でグランコクマへと立ち寄ったルーク達は、まずは宮殿へと足を運ぶ
 事になり、この状況へと至っていた。
「は。・・・では陛下、また後ほど御伺い致します」
「うむ。夕食の際にはジェイドも同席させよう。あの馬鹿は、最近また研究馬鹿に戻ってしまって
 こういう事でもなければ滅多に宮殿に顔も見せない始末だからな」
 不機嫌そうに肩肘を突きながらピオニーは愚痴の構えに入ろうとする。
「・・・近頃の陛下はこうなると長いんだ・・・・・二人とも、ここは早めにと退散するぞ」
 隙を見てガイがティアとルークの二人にこっそりと耳打ちする。
 こくり、と頷いた二人は仰々しくその場に膝を着いて頭を垂れる。
「陛下の御好意、有難く存じ上げます・・・・・では、これにて御前を失礼させて頂きます」
「おう。わかった。あと、ガイラルディア伯爵。お前はここに残れ、気が変わった」
「げ・・・へ、陛下、私めも手付かずでいた公務の方がありますので、これでしつれ―――」
「いい。後でやれ。残れ。案内は他の者に任せるから心配はするな」
(ごめんよ、ガイ・・・・・・)
 後ずさりするガイを生贄にして、ティアとルークは案内されるままに謁見の間を後にしていた。


「ガイには、なんか悪い事しちまったな・・・・」
「そうね。でも仕方ないわ。彼はマルクトの貴族なのだし、あれくらいの付き合いは臣下の勤め
 としては当然とも言えるわ」
 品のいい、しかし豪奢過ぎない内装の客室で、思い思いに寛ぎながら先程の事を話す二人。
「なあ、ティア。この間、ガイと一緒し始めてから随分とアイツに冷たくないか?」
「そ、そんな事ないわ。それよりも、わたしはダアトに提出する報告書と休暇届けを書かないと
 いけないし・・・・・それと、落ち着いたら後で詳しく、家を飛び出した訳を聞かせて頂戴」
ルークの問いに対し、ティアは多少の動揺を見せながらも話題を変えてそれを凌ごうとする。
「ん。わかったよ。じゃあ、俺は少し話す内容を纏めてくるから、ティアは仕事頑張ってくれ」
「助かるわ」
「――――それとさ、ティア」
 腰掛けていた椅子から立ち上がったルークは、背を向けたままティアに話しかける。
「何?ルーク」
「うん・・・俺、また後先考えずにティアを連れ出したりして、迷惑かけちまってるな」
「いいのよ。言う程、こちらの仕事も忙しくはないし・・・それに他の教団の人だっているわ」
「サンキュ。でも、こうしてでもティアと離れたくなかたっていう、気持ち、本物だからさ」
 そこまで言って、ルークは気恥ずかしそうにぽりぽりと左の頬を指で掻く。
「ルーク・・・・・・」
「そんだけ!じゃ、また後でな!」
 そこまで言い放って、扉をバタン、と音を立てて閉めルークは外へと出て行った。
「・・・わたしも、同じ気持ちよ。ルーク」
 胸に手をあて、そう呟くとティアは自分の仕事道具を荷物の中から取り出し、部屋に備え付け
 られた木製の大きな机へと移動する。
「ダメね、わたし。本当はルークの様に本人の前で言うべき事なのに」
 手馴れた手つきで書類へと筆を走らせながら、ティアは小さく溜息をついた。

「以上の理由により、勝手ながら一時的な休暇を取らせて頂きたく導師代理にお願い致します
 ―――――我ながら、本当に勝手な理由ね」
 自らの書き記した報告書兼休暇申請書を読み返し、ティアはその身を傍の寝台へと投げ出した。
「二人とも、まだ帰ってこないのかしら・・・・・・」
 ルークはともかくとして、流石にガイには少し悪かったかしら、という考えが頭を過ぎる。
(ルークの言う通り、少しガイには冷たすぎたかもしれないわ・・・・・)
 偶然――――とガイは主張している――――とはいえ、この間の夜の出来事を邪魔されて、腹を
 立てている自分自身にティアも気付いてはいるのだ。
 しかしその事を認めると、まるで自分が誰彼構わずに快楽を求めて男性へと身体を開いてしまう
 ふしだらな女なのではないかという考えが浮かんできてしまい、ティアは無意識の内にその事に
 ついて考える事を避けていた。
(ルークに、彼にあんなことをされたとはいえ・・・・・・恥ずべき事だわ)
 それまで一切という程に男性との個人的、延いては肉体的な関係を持たずに過ごしてきた彼女に
 とって、先日の夜の一件は余りにも衝撃的な出来事といえた。
 ルークの見せた想像以上の技術もそうであったが、何よりもそういった行為が初めてであるにも
 関わらず、敏感に身体を反応させ果てには彼自身を求めて身体を投げ出そうとした、自分自身に
 ティアは強い戸惑いを感じていたのだ。
(一般的には、初めて性交渉に及ぼうとする女性の大半はその行為に対して強い拒絶感や不快感を
 示す――――といわれているはずなのに)
 飽くまでも理性的に物事を考えようとして、ティアの思考は深みに嵌まっていく。

 気持ちを整理していく積もりが、あの晩の彼との行為を次第に思い起こしていく事に繋がり始め
 それを打ち消そうとティアは片手を自らの額に軽くあてて更に溜息をついた。
「これじゃ、本当に可笑しな女だわ。ルークがこれを知ったら・・・なんて思うのかしら」
 自虐的にそう呟いてはみたが、やはり頭の中からは彼の幻影が消えてはくれない。
 ぎこちなく、けれども優しく自分を溶かしていく情熱を秘めた熱い愛撫の感触がまざまざと思い
 起こされ、ティアは微かに熱い吐息を吐いて両腕でその身体を抱きしめながら身を震わせた。
 まだ彼とはキスすら交わしてはいないのに、と古風染みた考えを巡らせながらもその指先は自然
 自らの双丘と、まだ誰も受け入れた事のない秘所へと伸びる。
 寝台に預けた体を横倒しにして、何か大事なものを抱え込むかの様な姿勢になりながらティアは
 ルークの与えてくれた快楽への道標を辿る様に、たどたどしくその指先を服の上から走らせた。
「――――るー、くっ・・・はぁ、はっ・・・・っん、く・・・・・あっ・・・」
 密かに行うつもりでいたその行為に没頭する内に、沸き出でる快感に圧されつい堪えきれず声を
 あげてしまったティアは、自分自身の反応に驚き、身を起こして周囲を見回した。
「・・・・・・・ふぅ」
 確認して安堵の溜息を吐くと、ティアは先程まで自身のもっとも大切な場所にあったその指先を
 目にして、頬を赤く染め上げた。
(やだ・・・・・わたしったら、こんなにしちゃってるなんて)
 てらてらと輝き、ぬめりを帯びたその指は見た事もない様な妖しさを漂わせており、その光景に
 ティアは自分の身体がまたも熱く疼いて反応していくのを実感していた。

 久しぶりに目の当たりにするグランコクマの壮大な水景色を十二分に堪能した後、ルークは再び
 ピオニーに貸し与えられた客室へと足を進めていた。
「しっかし、譜業が衰退し始めてるってのに相変わらずスゲーなぁ。ここは」
 エルドラント崩壊以降、プラネットストームを失ったこの世界では緩やかな譜術・譜業の衰退が
 始まっていた。
 特に機械的なものによる補佐を必要としてこなかった譜術の衰退は著しく、力の弱い譜術士等は
 職を失っていく者も少なくはないのが現状である。
「そういやここには、ディストの奴もいるんだっけ。陛下に色々難癖つけられて、譜業の研究でも
 させられてんのかな」
 何気なくそう呟いていたが、実際にグランコクマでは譜業の研究が以前よりも盛んになっており
 この壮大な景観も新たに開発された譜力増幅器によってその景観を保っていた。
「でも確かにここなら、ガイの言う通りアルビオールの修理もできるし・・・・・ジェイドにも会える」
 きっ、と表情を引き締めてルークは歩を進める。
 もう少しいけば、ティアのいる部屋に着く。
「ジェイドに会えば、俺が子供をつくる上での問題点とか、色々聞けるかもだけど」
 その前に、俺がティアとちゃんと話をしないと、と声には出さずに自分に言い聞かせながら客室の
 扉の前に立ってルークはコンコン、と軽くノックをした。
「ティア、もう仕事の方は終わったか?」
 声を掛けた直後、どたばたっ、という何か人が慌てて動いた様な音がルークの耳に聞こえてくる。
「ル、ルーク。少し待ってて、今、書類を片付けるから」
 珍しく、というか最近妙に聞く機会の増えたティアの慌てる声が部屋の中から届いてくる。
「別に、そんなん気にしないのに」
「わ、わたしは気になるのよ!お願いだから、外で待ってて頂戴」
 ふーん、と鼻を鳴らしてから、ルークはふと、ガイが言っていた事を思い出してティアに返事をした。
「わかった、大人の女性は色々と大変なんだろ。待つよ」
 
 ガタガタガタッ!

「ティ、ティア!?なんか凄い音したけど、大丈夫か!?」
「へ、平気よ!それよりも中に入らないでいて!」
 ティアが妙に上擦った調子で叫びに近い声をあげてくる。
 反射的に扉を開けようとしたルークは、その声に思わず気圧されて身体を硬直させた。
(本当に平気なのかな・・・・・一体、何してるんだろ、ティアのやつ)
「もういいわよ、ルーク。お待たせしてごめんなさい」
 たっぷりと数十秒は待ってから、ティアから声が掛かってきた。
「へーい。それじゃ、しっつれいしまーす」
 先程までの真剣な面持ちはどこへやら、すっかり緊張感のない顔つきをして扉を開き、ルークは
 部屋の中へと足を踏み入れた。

「うっ・・・・・・なんだこれ、香水くせぇ」
 途端、鼻を突いて襲ってきた強烈な香気に、ルークは思わずむせ返ってげほげほと大きく咳込む。
「なんだよこれ・・・・ティア〜」
「ご、ごめんなさい。アニスから贈ってもらった新しい香水を誤って零してしまって、後片付けを
 していたところだったのよ」
「そっか。でもそれくらいの事なら、ここの使用人にでも言えばいいのにさ」
 自分で片付けをする、という感覚が今一わからないルークがそんな感想を洩らす。
「そ、そういうわけにもいかないわ。わたし達は、ピオニー陛下の御好意でこうやって滞在させて
 貰っているわけだし、自分の後始末はちゃんと自分でつけないといけないわ」
 どこか落ち着かない様子で返してくるティアに、ルークはまたも「ふーん」と鼻を鳴らして頷く。
「前から思ってたんだけど、ティアのそういうところってさ・・・・・・なんていうか、自立してるって
 いうか・・・・」
「?」
 的確な表現を求めて、しかし巧く言葉にできずにいる青年を見て、ティアは小首を小さく傾げた。
「そうだ!家庭的。家庭的だよなー。ティアって。俺なんてすぐに人任せで片付けなんてしないし」
「そ、そう?なんだか少しずれてるみたいだけど、ありがとうって言っておくわ」
 取り敢えずそれ以上疑われる事はなかった為、適当な返事をしてティアはほっと胸を撫で下ろす。
(それにしても家庭的だなんて・・・・ルーク、わたしの事をそういうイメージで捉えているのかしら)
 そうだとすると、現実の自分とは大したギャップがある様に思われて、ティアはルークに対して
 何か、申し訳の無い事をしているかの様な気持ちになってしまった。
「そういや、ガイの奴、まだ戻ってきてないのか?まーだあの話に付き合わされてんのかな」
「それはわたしも思ったけど、流石にこの時間だし何か別の用事を済ませているのかもしれないわ」
「そっか。・・・ああ、手付かずの公務が何とかって言ってたっけな。あいつも大変だなぁ」
 ガイにしてみれば、単にピオニーに愚痴から逃げる為の言い訳だったのだが、ルークはティアの
 予想に相槌を打ってから、近くに置いてあった適当な椅子に腰掛けた。
「ま、そっちは心配しても仕方ないか・・・・ティア、さっき言っていた訳っての。話していいか?」
 まだ幾分、部屋に充満する香気に喉を詰まらせながらもルークは表情を引き締めてそう言った。
「ええ、構わないわ」
 それに対し短く答え、ティアは軽く呼吸を整えてから、ルークと向かい合う様に椅子に腰掛けた。

「どこから話したらいいか考えたけど、やっぱ、最初から話す事にする」
「・・・・・・・」
 真剣な面持ちで話し始めるルークをティアは無言のままで見守る。
「ちょっと前にさ。ティア、俺に『この先、私達どうしようか』って言ったろ。その答えをずっと
 考えて、それで、少しだけジェイドとかに相談したくなったりして、家を出ていたんだ。ゴメン」
 一息にそこまで言って、ルークは一つ大きく息を吸い込む。
 その様子をじっと瞳を逸らさずに見つめ続けるティアを確認してから、青年は再度言葉を続けた。
「でさ。タタル渓谷で、ガイの奴にとっ捕まっちまって。説教された」
 一体、何を?とティアが口にするよりも速く、ルークは一息に言う。
「俺、ティアと一緒になりたい。結婚して、二人の子供が欲しいって思ったんだ」
「ルーク・・・・」
 怒涛の勢いで言い切ったルークに、ティアは思わずその名を呼んで息を呑んでいた。
「でも、でも俺・・・・・・・やっぱ、元はレプリカだろ?子供とかつくって、何か悪い事とか、起きないか
 心配になってきて・・・・そんで、それをガイに話したら、こっぴどく怒られちまってさ」
 そこまで言って「御免」と小さく付け加えてルークは俯いた。
「どうして?何故そこで貴方がガイに怒られなきゃいけないの?」
 自分へ向けられた真摯な回答を目の当たりにし、自分の前で小さくなって落ち込むルークの姿を
 見かねたティアは、憤慨する様にルークへと問いかけた。
「ガイは、自分だけで悩むな、一番にその事を彼女に・・・ティアに相談して、答えを一緒に出せって
 そう言ってくれたんだよ。・・・俺、怒られて当然だと思った」
「・・・・・・ばか」
 ティアは目を伏せてそう呟き、言葉を続けた。
「聞いて、ルーク」
「ん・・・・・・」
 ルークは顔を上げて短く返す。

「わたし、貴方とこの先もずっと――――ずっと一緒に、そういう悩みを共にしていこうと思うわ」
「それって――――ティア!」
「きゃっ!?」
 目を伏せ続けていたところに突然抱きつかれ、ティアは驚きの声を上げる。
「ちょ、ちょっとルーク。どうしたのいきなり、危ないじゃない」
 戸惑いの色を隠せないまま、ティアは気恥ずかしさから首筋にかけられたルークの腕に自らの手を
 掛け――――そこで、青年が小さく震えながら微かな嗚咽の声を上げている事に気が付いた。
「ティア・・・・・ティア・・・・・俺、俺・・・ティアのこと・・・・」
「・・・・・ルーク、貴方・・・」
 肩を震わせながらしゃくり上げるルークの腕をティアは優しくふれる。
 自然、唇から洩れ出たティアの温かく優しい旋律が、暫しの間部屋の中に響き続けた――――

「ごめん・・・・俺、もしかして寝ちゃってたのかな」
 ややあって、呼吸も声の調子も落ち着いた様子でルークはティアに身体を預けたままの目を覚ます。
「ほんの、少しの間だけよ。気にしないで」
 こちらはいつも以上に落ち着いた様子のティア。
 そんな彼女の声を聞いて、ルークは自分自身に呆れ、頭を振りながらティアから静かに身を離した。
「はは・・・・・俺、ダセェな。こんな歳になって、子守唄聞いたみたいに寝ちまうなんて」
「そんなことは、ないわ」
「ティア・・・・・」
 自嘲気味に洩らした一言に意外な程に力強く返され、ルークは目を丸くしてティアの顔を覗き込む。
「今の貴方がださい、とか格好悪いとか・・・少なくとも、わたしはそうは思わないわ」
「なんか・・・ティアらしくない、強引な感想だな」
 へへ、と照れ隠しをする様に鼻の頭を指で掻き、ルークはティアへと改めて向き直る。
「――――ありがとう。ティア。俺、頑張るから・・・・・今度からは、見守ってもらうだけじゃなくて
 俺も、ティアの事を大切に守っていくから」
 真顔になってそんな事を言ってくるルークに対し、ティアも真剣な面持ちでその言葉を受け止める。

「わたしも・・・・わたしも本当に貴方と一緒になって・・・・・そ、その、けっ、結婚して、子供を・・・」

「わーーーーっ!?ティア!?ちょっとタンマ!早まらないでくれ!!」
 言い出したはものの、途中から恥ずかしさで声を詰まらせながらも、正確な返事を返さなければと
 必死になって後を続けようとするティアの声を、ルークは突如として叫び声を上げながら遮った。
「な、なに?わたし、今、可笑しなこと言おうとしてたかしら?」
 こういった事に全く慣れていない自分の言い回しに、自信のないティアは今しがた口にした台詞を
 反芻しながら、必死になって何か可笑しな点がなかったか探そうとした。
「いや、だってさっき言ったばかりだろ!?子供の事はこれから二人で考えてから、それからだって!」
 ティアの肩を掴みながら、負けず劣らずの必死さで捲し立てるルーク。
「ちょ、ちょっとルーク。落ち着いて。確かに子供の事は、欲しい・・・とは思うけど、何も今すぐに
 って言ってるわけじゃないのよ」
「わー!だからタンマだって!せめてジェイドにも相談してからにしないと!」
「大佐に・・・・?ルーク、貴方一体さっきから何を言って――――」
 怪訝な面持ちで問いかけるティアの言葉も耳に入らない様子で、ルークは尚も止まらずに続ける。

「だって!二人共真剣に子供が欲しいって思ったら、赤ちゃんができちまうじゃないかよ!!」

 絶叫が広大な敷地を誇るグランコクマ宮殿を瞬く間に駆け抜けていく。
「本当に・・・・・ばか」
 深々と溜息を吐いて、ティアは力なく肩を落とした。

「まだ日も沈まぬというのに、なんとも気の早い話だな。御両人」
 上座の席に着き、食事中だというのに、やはり肘を突いたままの鷹揚な態度のピオニー9世。
 それに続く形で、緑の軍服に身を包んだ一見して紳士風の男が口を開く。
「いやー。若いってのは本当にイイコト、ですねー。ねぇ、ルーク♪」
「久しぶりに顔を会わせたと思えば、そんな話からかよ・・・・・もう勘弁してくれぇー」
 本当に久しぶりの再会にも関わらず、まるで先程まで一緒に行動を共にしていたかのような
 相変わらずの調子でもって、ジェイドはルークに茶々を入れてきた。 
「御二人共、食事の席なんですから、少しはそういう会話は遠慮して下さいって・・・・・」
 国を代表する二人の余りの品性の無さと、親友の窮地を見かねて助け舟を出したのはガイだ。
 本当に溜まっていた公務の処理に追われていた様で、一番最後にこの席に参列してきていた。
「――――サンキュ、ガイ・・・・・」
「いいって事よ。―――それよりもルーク。お前、この後ちゃんとティアの機嫌取っておけよ」
「女性は怒らせると後が怖い、だろ?わかってるって」
 こそこそと内緒話ばかりで一向に食事の進まないガイとルーク。
「だれが怖いのかしら?二人とも」
 そこに降り注ぐティアのにこやかなと笑みと声。
 当然、その目は笑ってない。
「な、何でもないよ。なぁ、ルーク」
「あ、ああ。ここの料理はやっぱうめぇなーっ、て!」
「そう?でも、余り下品な表現は控えてね。貴方の恥は、直接、キムラスカの恥に繋がるから」
(うひぃー・・・怒ってる、怒ってる・・・・・)
 内心、ティアの言動が気が気でないルークであったが、食事の席で皆の前ともなれば弁明も
 できず、耐えるという選択肢しか残されていない事ぐらいは何とか判断できた。
「うーん。そうやって怒った姿も魅力的だねぇ、ティアちゃん」
「あ、陛下の恥は、我がマルクトの恥ではないので御安心して存分に掻いて下さいね」
「うるさい。お前はひっこめ。ウザイ」
 険悪な空気を読まずに、どこかで聞いた様なやりとりを繰り広げるピオニー&ジェイド。
「釣れないですねぇ。折角、忙しい折に暇を縫って参上して差し上げたのに」
「・・・なぁ、ジェイドって今、何の研究してんだ?」
 どこか普通と違うニュアンスで言って肩を竦めるジェイドにルークが問いかける。
「フォミクリーの再研究、が主な内容ですよ。・・・ま、ペットを使っての譜業増幅器の開発も
 片手間にではありますが、進めたりもしていますけどね」
「じゃあ、ディストの奴、元気にしてるのか?」
「それはもう。うんざりする程、毎日やかましく喚き散らしていますよ」
 そっか、と軽く返事をしてルークは元六神将・死神のディストの姿を思い浮かべた。
(アイツ、俺達にとって敵だったけど・・・・なんか憎めないんだよな。ま、元気ならそれでいっか)

「さて、俺はそろそろ可愛いブウサギ達に餌をやってこなきゃならん。後は好きにやってくれ」
 積もる話もあるだろう、と付け加えてピオニーは席を立ち、そのまま退室しようとした。
「最近はガイの奴が俺の可愛いネフリーにちょっかいを出し始めてな。躾に手が掛かって困る」
「陛下!その誤解を招く様なネーミングセンスは止めて下さい!」
 冷や汗を流しながら必死の抗議を行うガイの叫びも届かぬ風でピオニーはその場を後にした。
「全く、あれさえな・・・・・くても問題有り過ぎるな、うちの大将は」
「ガイも大変だな・・・・・」
「いや、まああれでいて、陛下も偶には良いところもあるんだ。本当に偶には、だけど」
「珍しく意見が合いましたねぇ。ガイ。最も本当のところは偶にではなく極々稀になのですが」
 傍から見れば臣下を相手に遊んでいる様にしか見えないピオニーだが、同じ主君に仕える者
 同士、信頼できる点もあるらしく、ワイン片手に二人はルークを挟んで言葉を交わしていく。
「さて、と・・・・・まだ語る事も尽きないのですが、私は本日の処はこれで御暇させて頂きます。
 少しばかり飲み過ぎてしまった様ですので」
 十分に話し込んでから、ジェイドは珍しく機嫌良さそうな風でそう言って席を立つ。
「珍しいな、アンタが深酒だなんて。こりゃ、明日は雨でも降るかな」
 そう言ってグラスを傾けるガイの顔も既に赤く染まり、ほろ酔い気分、といった感じだ。
「あ、ジェイド!今度、少し相談したい事があるんだけどさ。顔出していい日とかあるかな?」
 今更ながら猛烈な勢いで夕食を腹に収めていたルークが振り返ってジェイドに声をかけた。
「わかりました。他ならぬかわい〜い、弟子の頼みとあらば無下に断るわけにもいきませんね。
 後、時間の方は何時でも構いませんよ」
「ありがとう。行く時はできるだけ早めに連絡入れる様にするよ」
「・・・旦那、妙に優しくて怖いんだけど、何か裏があるんじゃないのか?」 
「いえいえ、裏なんて大層なものは在りませんよ。私も早く、可愛い赤ちゃんの顔を見てみたい
 ですから。ねぇ、ティア」
 
 ぶっ。

「た、大佐!?」
「うっわ、ティア、お前豪快に吹き出したなー・・・・・」
 それまで言葉少なに皆の話にも相槌を打つ程度でいたティアはまるで霧吹き器の如くワインを
 テーブルの上へと吹き出した。
「――――っぷ、く、あはははははは!では、皆さん御機嫌よう!」
 それを見て気分爽快、といった面持ちで高らかに告げ、ジェイドは席を後にしていった。
「うっわー・・・・・あんなに朗らかに笑うジェイドの旦那、俺初めて見たわ・・・・」
「俺も・・・・一体、何であんなに嬉しそうなんだ?何かいい事でもあったのか?」
 不思議そうな表情でジェイドを見送るルークを見て、ガイはなにやらニヤニヤと顔を緩ませた。
「イイコトなら、これから―――そう、今晩にでも、あるんじゃないかな」
「ちょ、ちょっと、ガイ!貴方までそんな事言い出したりして!」
 チラ、とガイに意味あり気に目配せされ、ティアは顔を真っ赤にして席から腰を浮かせた。
「いや、本当のところ、俺も嬉しいんだ。陛下の御配慮で部屋は一緒になってるから、後は二人で
 ごゆっくり・・・・・って、これじゃ俺がジェイドの旦那みたいだな」
「あれ、ガイも行っちまうのか?メシ、まだ沢山残ってんぜ」
「お前は・・・・・もう少し、食い気より色気ってヤツを覚えろよな」
 そう言ってガイは大仰に肩を落とした後、背筋を整えなおすとそのまま二人に背を向けて片手で
 サヨナラの挨拶をしながら去っていった。
「―――わたし達も、そろそろ部屋に戻りましょう」
「え、だったまだメシが―――」
「戻るの」
「へーい・・・・」

「ったく、ジェイドといい、ガイのヤツといい。一体何が言いたいのかわけわかんねーって」
 ガイの言葉通り、二人一緒の寝室へとメイドに案内された後、ルークはぼやきの声を上げていた。
「なぁ、ティア〜。お前ならあの二人の言っていた事の意味、わかってるんじゃないのか?」
「・・・・・ふぅ」
 本日何度目になるかもわからない深い溜息を吐いて、ティアは軽く眉根を寄せていた。
(ルークってば、本当に何にも知らないのね・・・・・困ったなぁ)
「まださっきのこと、怒ってんのか?俺、赤ん坊は好きになった者同士、望んで授かるってガイの
 ヤツに以前聞いてて、あんまり深く考えないでいたんだよー。機嫌直してくれよ〜、頼むからさ」
(でも、ルークはちゃんとわたしに相談してくれたし、わたしも本当にルークならいいと思ったわ。
 それならわたしもルークに対して、きちんと教えるべき事を伝えるべきだわ・・・)
「なぁー。俺が勉強不足なのは謝るからさ。この通りだからヘソ曲げないで・・・・・」
「あー、もうっ!煩いっ!ちょっと静かにしてなさい!」
 びくっ、とティアの剣幕に押されてルークは部屋の端へと飛び退く。
「またこのパターンかよー。勘弁してくれよ、ホント」
「いいから、ここに来て座りなさい。・・・・・・今から、ちゃんとその事について教えてあげるから」
「え、ホントか!?ありがとう、ティア!」
 トホホ、といった感じの面持ちから一転し、表情を輝かせながらルークは寝台の上に正座する。
(全く・・・これじゃ皆の思惑に乗せられたみたいで、釈然としないけど・・・・仕方ないか)
 諦めにも似た境地で独白して、ティアもルークと同じ寝台の上へと腰掛ける。
「始めに、言っておくわ。これから話す内容は、単なる興味本位や・・・その、自分の欲望を満たす為に
 行っていい事ではありません。わかった?」
 うんうん、と力強く頷いてルークが先を促す。
「ひっさしぶりだなー、ティアの授業。俺、最近は結構こういうの楽しみなんだ」
「ちゃんと集中して聞きなさい。えと、じゃあ何から言えばいいのかしら・・・・そうね、これにしましょう」
 言葉を一つ一つ、慎重に選びながらティアは説明を続けていった。

「まず、多くの生き物は次世代に自分達の子供を残す為に『生殖行為』というものを行うものなの。
 例外もある けど、私達が目にする生き物の殆どがこの行為によって誕生してくるわ」
「ふむふむ・・・・・生殖行為、と」
「いちいち声に出さなくていいわ。・・・・それで、この生殖行為によってメス、つまり人間で言う
 ところの女性が胎内・・・・分かり易く言えば、お腹の中ね。そこに子供を宿すのよ」
「あ、それ知ってるぞ!ニンプサン、とか呼ばれている女の人がお腹んとこだけ、すっげぇ大きくしてるヤツ」
 両手を使って大げさなジェスチャーをして見せるルークを見て、つい吹き出してしまうティア。
「わーらーうーな。そんで?次は、次は?」
「ごめんなさい。えと、それでね・・・お腹の中に宿った子供は、母親の身体の中で育っていくの」
 ティアは自らの下腹部に手を持っていくと、静かに目を閉じて後を続けた。
「そして、時期がやってくると・・・赤ちゃんとしてお腹の中から産まれてくるのよ」
「へぇー・・・・・なんか、信じられない話だな。人間の中で子供が育っていくなんてさ」
「そうね・・・・説明してるわたしだって、実際にはよく解ってないのかもしれないわ」
 難しいもんなんだな、と呟いてルークは何気なくティアの下腹部へとその掌を持っていった。
「きゃ・・・・・」
「あ、わりぃ・・・・無用心にさわっちゃ駄目なもんなのかな」
 ティアの声に驚いて手を引き、ばつが悪そうにルークは彼女を見つめた。
「あ、そうじゃないわ・・・・・勿論、大切に扱うべきなのだけど、つまり・・・・・」
 言い淀んで一旦視線をルークの手から逸らして、ややあってからティアは再度口を開いた。
「互いに望みあった相手であれば、触れ合ったりするのは決して悪い事じゃない・・・と思うの」
「難しいんだな。子供をつくることって・・・・・なあ、質問してもいいか?」
 その言葉に「きた」と心の中で呟いてからティアは幾分の間を置いて小さく頷き返す。
「その『生殖行為』ってヤツ。具体的にどうやってやるものなんだ?行為っていうからには、やっぱ
 何か決まった事をしなきゃならないんだろ?」
(やっぱり・・・・・そうくるわよね)

 胸中で呟いた先刻の言葉を何回も噛み締め、ティアはついに覚悟を決めた。
「ルーク、この間の夜・・・・・その、わ、わたしの・・・・・胸を、ルークがさわった、でしょ・・・?」
 何度も言葉を詰まらせながらそう口にしたティアを、ルークは一瞬、きょとんとした表情で眺める。
「あ・・・あ、あれがどうかしたのかよ」
 しかし、すぐにその出来事に思い当たり、ルークは言葉をどもらせながら答えた。
「ええ、と・・・・実はあれが、人間の生殖行為の一部にあたるものなの」
「―――ええ!?じゃあ、俺とティアにはもう、赤ちゃんができちゃうって事なのかよ!?」
 驚いてティアから身を離そうとするルーク。
「もう、落ち着いて聞いて。まだ話は終わってないのよ」
 逃げるルークの服の裾を掴んで、ティアはそれを引き留めた。
「お、おう・・・・でも急にそんな事言われたら、びっくりするつーの」
「わ、わたしだって、急にあんな事言われて驚いたし・・・・・恥ずかしかったわ」
 赤面しかけてから、続けるわよ、と言ってティアはこほん、と一つ咳をついてそれを誤魔化した。
「あの時の行為自体に、子供をつくる行為は含まれてないの。だから安心して」
「なんだ・・・・じゃあ、なんだってあれがその行為の一部なんだよ。準備運動みたいなモノか?」
「そ、そうね・・・・身体が、その行為を無理なく実行する為の準備といっていいわ」
 そこまで言ってから、ティアはふとルークが頻りに自分の身体、特に胸の辺りにチラチラと視線を
 向けている事に気が付く。
(やだ・・・・・ルークったら、この間のこと・・・・思い出してるんだわ)
 しかし、気が付いたからといって説明を止める訳にもいかない。
「・・・・どこまで話したかしら。――――そう、その行為について、だったわね」
「ティア、お前なんか顔赤いぞ?大丈夫か?」
「きっ、気のせいよっ!ともかく、その行為についての説明をさせて頂戴」
 コホンと咳払いを一つしてからティアは話を強引に続けた。
「ええとまず・・・・子供をつくる際に人間の男女は、身体のある器官を交わらせる必要があるの」
「ある、器官?」
「そう、それを今から教えるから、良く聞いていて」

「へー。俺、これってしょんべんする為だけについてんのかと思ってた」
「大間違いです。とても重要な器官なのよ」
 ひとしきりの言葉での説明を終えて、ティアは呆れたように肩を小さく竦めた。
「ほんと、今まで誰も教えてないなんて・・・・家庭教師の先生とかに習わなかったの?」
「べ、勉強は嫌いだったんだよ」
 言い訳にならない事を言ってから、ルークはふと、何かに気付いたかの様に首を傾げた。
「あれ?これが男の生殖器って事は、わかったけど、女の人は一体どんなのが付いてるんだ?」
「――――そうね、当然その疑問に行き着くわよね・・・・・」
 ティアは深々と溜息をついて、予想通りの疑問を口にしたルークに改めて向き直る。
「どうしたんだ、ティア?そんなに真剣な顔して」
「先に言っておくわ。今、貴方に話した様な・・・・いわゆる性的な話というのは普通は人前で声を
 大にして話す事でない事なの。つまり、とても恥ずかしいと思って当然の行為だわ」
「え・・・・・そうなのか。知らなかった」
「そう。だから、これからも迂闊にこういった事を他人に聞いたりしては駄目よ。へたをすれば
 その人のプライベートを侵害する事にもなりかねないわ」
 ティアはルークが新たな知識を得て、調子に乗らないかという事を心配をしていたのだ。
 興味本位で行ってはいけない、と釘を刺したとはいえ、相手はルークであるから気が抜けない。
「難しいんだな・・・・わかった。気をつけるよ」
「いい返事ね。でも貴方――――本当は凄く、女性の生殖器に興味があるでしょう?」
「そ、そんな事ないぞ。軽い気持ちで知りたがったりしないよ」
 既に信用の置けない反応を見せるルークの目ををティアはじっと見つめた。
「嘘ね。チャンスがあれば、貴方はそれを知ろうとするわ」
「・・・・・ごめん、ティアの言う通りだ。本当は、気になって仕方がない」
「やっぱり、ね」
 肩を落として項垂れるルークを半眼になって見つめてから、ティアは大きく息を吸い込んだ。
「――――わたし以外の女の人と性的な関わりを持たないと、約束して」
「え?」
 唐突にそう言われて、ルークは間の抜けた返事を返す。
 有体に言えば、浮気は駄目よ、という意味なのだがルークにはそのニュアンスは伝わらない。
「約束したら、実際に見せてもいいわ」
「――!!する!約束でもなんでもするよ!」
 碌に約束の内容も確認しないまま、勢い良くティアの手を掴んで答えるルーク。
(本当に、心配した通りの反応ね)
 瞳を輝かせて「見せてくれ」とせがむ青年の姿に、ティアは先程よりも更に深い溜息をついて
 大きく肩を落とした。

「・・・これで、よく見えるかしら?」
 薄暗がりに包まれた室内にティアの優しげな声が響く。
 ネグリジェに着替え終えた彼女の白い肌は、一つだけ灯された譜石照明に煌々と照らし出され
 神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「う、うん・・・・ティアの身体・・・・滅茶苦茶、綺麗だ・・・・・」
「―――ありがとう。嬉しいわ」
 賞賛の言葉を漏らすルークに素直に喜びの声を返して、ティアは自身の白い肌に左手を宛がい
 ルークの視線を下の方へと向けて、ゆっくりと導き始めた。
「あ・・・・」
 その指先が下腹部を過ぎ去り、薄く繁みをつくった位置まで来て、ルークは感嘆の声を上げた。
「ティアのそこ・・・・俺のと、全然違うカタチしてる」
「そうよ。ここが、人間の女性の『生殖器』の入り口よ―――――指で触れて、確かめてみて」
「え!?い、いいのか?だ、大事なところなんだろ?」
 不安そうな声で確認してくるルークに、ティアは微笑しながら頷き返す。
「平気よ。でも、わたしも人に触れさせるのは・・・・・その、初めてだから・・・・急に可笑しな声を
 出したりするかも知れないわ。そうなっても、貴方は慌てずにいて頂戴」
「わかった。でも、できるだけ気をつけて扱うよ」
 そう言って真剣な面持ちでルークは頷くと、その左の掌をそっとティアの繁みへと伸ばした。
「・・・・・あっ」
「痛いのか?ティア」
 恐る恐る、といった手つきでもって柔らかな感触の繁みを掻き分けながら、ルークはティアを
 心配して聞き返す。
「いえ、ちょっと驚いてしまっただけよ。ごめんなさい―――――続けて頂戴」
 わかった、と短く返してルークはその指先を動かし、彼女の知られざる器官を探索していく。
「っ、ぁく・・・っ・・・!」
 声を押し殺し、ティアはそのくすぐる様な刺激と気恥ずかしさに耐える。
 ゆっくりとしたその行為に逆に焦らされているかの様な感覚に変わり、ティアは自分の吐息が
 微かにではあるが、熱を帯び始めている事に気がついていた。
「うわっ・・・・・・ティア、なんかここ、指が沈んでいきそうだ」
 ちゅく、と湿り気を帯びた音を立ててルークの指がティアの花芯へと埋もれていき、ティアは
 息が荒くなっていくのを堪えきれないまま、尚も説明を続けようと口を開く。
「そ、そこが・・・んっ・・・赤ちゃんが、産まれてくる、ばしょ、で・・・貴方のせいしょ、く・・・き、が
 ま・・交わる、場所・・・・よ」
「ティ、ティア、なんか辛そうだけど、本当に平気なのか?」
 次第に呼吸を荒げていくティアの身を案じながらも、ルークは次第に湿り気を増していくその
 花びらから指先を離せずに、くちゅ、ぴちゅ、と淫靡な水音を立てて、尚かき回し続けていた。

「っ・・・もう、ちゃん、と・・・ん、ふぅ・・・きいて、るの・・・?」
 ティアの方も、説明に集中していないルークを叱責しながらも、その身体を離そうとはせずに
 逆に体重をルークへ預けて、その肩に両腕を廻して縋りつく様に抱きしめていた。
「うん・・・・聞いてた。すっげ・・・・・・ティアのここ、ぬるぬるになってきてる」
「もう・・・・・今は、そこを触れるのはお終い!」
 ルークが何気なく口にした言葉に反応して、ティアはさっと互いの身体を引き離そうするがその
 動きは腰に廻された青年の手によって押し留められた。
「やだ。今のティア、なんか・・・・凄く、色っぽいっつーの?そんな感じするから、俺止めたくない」
 言って、ティアの潤いを増してきた窪みから指を外しはせずに、逆にその動きを徐々に強める。
 ―――ちゅぷっ、ちゃぽぉっ・・・・じゅちゅ、ちゅく、ぴちゅっ・・・・!
「ル――――く!っる、ルーク、ダメ・・・・っ、あぅ・・・よしな、さ・・・ぁっ!」
「その顔見てると、滅茶苦茶興奮してくる。もしかしてこうすると・・・ティア、気持ちいいのか?」
 気持ちいい、という言葉にティアの両頬がカァ、と音を立てる様にして朱に染まっていった。
「なあ、俺・・・この先も試してみたい。興味本位じゃなくて、ティアとだからそうしたいって思う」
「・・・っ、も、う・・・貴方って、人は・・・・好きに、しなさいっ・・・んっ!」
 言い出したら聞かないんだから、とティアは声には出し切れずに心の中で呟いてから、小さく頷く。
「ありがと。この間のとこまでなら、俺ちゃんと覚えてっから。そこから先は、ティアに教えて貰う
 事になるけどさ。・・・えと、確かこう、だったっけな・・・・・」
「ちょ、ちょっ―――っあ――――ゃ!」
 瞬く間にたくし上げられたティアの白いネグリジェの内側をルークの指先が奔る。
(――――ルーク・・・)
 性急ともいえる勢いで自分の身体を求めだした青年の名を、ティアは声にはせずに呟いた。
 求められる事への怖さよりも、何か嬉しさとも満足感とも云えない不思議な感覚が溢れ出してくる
 のを心の中に感じながら、ティアはルークの次の行動を待ち構える様にして目を伏せた。
「やっぱ、ティアの胸って凄く柔らかいよ。さわってて、気持ちいい」
 そう言いながらルークは、捲り上げた寝巻きから姿を露にしたティアの白い豊乳へと舌を這わせる。
 ぴちゃ、ぴちゅ・・・・ぴちゃ、ちゅっ・・・・
 淫靡な音を伴い、ゆっくりとした速度でもってルークの舌先がその頂きを目指して進む。
「そ、んな・・・・こ・・・・っ、言わないで・・・・・ルークっ・・・・・」
 自らの肉体の淫らさを知らしめさせられる様で、ティアはルークの言葉に赤面して俯きながらその
 刺激によって与えられる快感の細波を堪える。
「本当の事、言ってるだけだ・・・・・っん・・・・ほら、こんなに綺麗で、とけそうなくらいだ」
 少しずつその硬度を増していく先端の突起に、カリ、音を立ててと青年の爪が小さく起てられた。
「―――ひぁ!?」
「・・・・ゴメン、痛かった?」
 突然襲ってきた痛みと、僅かにもたれされた快楽にティアは身体を弓なりに反らして声を上げる。

「――――はぁっ、はっ、はぁ・・・」
 一瞬、息が止まったかの様な感覚に身を包まれて、ティアは大きく呼吸を荒げながら息を継ぐ。
 その表情を見ていたルークは自分の中に以前感じた高揚感が、再び沸き出でてくるのを感じた。
「ティア・・・・・俺、ティアの事、もっと苛めたい」
 今度はその衝動を隠す事無く曝け出し、尚も執拗にティアの剥き出しになった双丘を責め立てる。
「――――っ!っあ・・・・る、ぅく・・・ダメよ―――ぁくっ!」
「見つけた・・・・・こういうのに弱いんだろ。ティア」
 耳たぶの裏を軽く甘噛みしながら、両の手の指先で明らかな硬さを主張する胸の蕾を強く、そして
 優しく、交互に緩急を付けながら刺激を与えていくルーク。
「やっぱ、ティアの顔見てると・・・・・なんかよくわかんないけど、俺、すっげぇ興奮してくる」
「―――――っ、お願い、ルーク・・・・やさしく、して・・・・お願い」
 僅かの間だけ緩みを見せたルークの責めの合間を縫い、ティアは瞳を固く閉じながらその目尻に
 一粒の涙を浮かべて、まるで許しを請うかの様な懇願の声をあげた。
 だが、微かな艶を帯び始めたその声音は、ざわめきだしたルークの被虐心を更に掻き立てる結果を
 招いたに過ぎなかった。
「駄目だ。今はこの間みたいに、ティアをよろこばせたいんだ。だから、もう少し我慢してくれよ」
 いつも自分を見守っていてくれた愛しい人が、自分の手と唇で与えられた感触と恥辱に耐えて肌を
 紅潮させている・・・その事にルークは例えようのない昂ぶりを感じ、その掌の動きに熱を込めた。
(わたし、よろこんでなんかいないわ・・・・・悦んでなんて、いないっ)
 声に出して言えばそれを認めてしまう―――そんな思いに取り憑かれてティアは激しく頭を左右に
 振り、いやいやをする様にしてその愛撫から逃れようと身を捩って暴れる。
「暴れんなよ・・・・動かれると優しくできないって。それともティア、乱暴な方が本当は好きなのか?」
「は、ぁ・・・そんなことっ・・・ぅ・・ない、そんなこと・・・・・っ!くぅ、あっ・・・・・っ!」
「――――嘘だろ。いま、すっげぇイイ声だしてるもん。どんどん興奮してきちまうよ、俺」

 荒々しく手でティアの柔らかな胸を弄って、その先端を一気に吸い上げる様をわざと彼女にも良く
 見える様にして見せて、ルークはティアの反応を伺う。
「っ!・・・・いや・・・・うそよ、わたし・・・悦んでなんて・・・・・」
「喜んでるよ。ほら、もう逃げていかないもん。ティアの身体」
「―――ぁあ・・・・・ぅ、いやぁ・・・・」
 自らの淫らに濡れ光る裸身をその眼前に突きつけられ、何か信じられない光景を見てしまったかの
 様に蒼い瞳を大きく戦慄かせて、ティアは息を呑み込んで身を震わせた。
 その扇情的な光景を眺めながら、ルークは自らの身体に火が灯されるような感覚を覚え、喉元から
 こみ上げてきた唾をごくり、と音を立てて飲み干す。
「あちぃ・・・・・汗、掻いてきちまった。脱ぐわ、俺」
 そう言って乱暴に自らの上着を脱ぎ捨てて、虚ろな表情のまま熱い吐息を漏らすティアのネグリジェ
 に向けてルークはその手を伸ばした。
「ティアのも、脱がすぜ。熱くて堪んないだろ?」
 不意に問われて、ティアは一瞬大きくその目を見開かせた後、ゆっくりと瞳を伏せて躊躇いがちに
 小さく頷く。
 恥じらいながらも自分の声に従うそのティアの姿を見て、ルークは静かに首を横に振って見せた。
「返事。ないとわかんないって。脱がしてもいいんだな、ティア?」
 既に答えは得られたにも関わらず、ルークは底意地悪く更にティアへと問いかけた。
「――――はい」
 微かな逡巡を見せた後、ティアは、はっきりと自らの意思でそう答えていた。

(たまんねぇ・・・・なんか、背筋がぞくぞくしてくる)
 初めて覗かせるティアのか弱く、しおらしげな表情を前に、ルークは言いようの無い昂ぶりを
 己の内に確かに感じていた。
 些か乱暴な手つきでルークはティアの寝巻きへと手を伸ばし、すぐさまそれを脱がしにかかる。
「あれ・・・・・くそっ、なんだこれ、巧く外れねぇ」
 だが、元より器用とは言えない上、造りを良く知らぬ女性の下着を相手にルークは苦戦をする。
「あっ、ダメ・・・・・焦らないで、ルーク。ここと、ここを・・・・」
「わ、わかってるって・・・・えぇい、この、こんちくしょうっ!」
「ちょ、ちょっと待って!自分で外すから、そんな風に無理矢理にしたら破れてしまうわ」
 躍起になるルークを正気に戻ったティアがなんとか宥めすかして押し留める。
「ごめん・・・・やっぱ俺ダセェー・・・・・」
「いいのよ、誰だって最初は戸惑うものだわ」
 先程までの強引さはどこへやら、下を向いてしょぼくれる青年を見てティアは気持ちに余裕を
 取り戻して、優しい口調でルークに慰めの言葉を掛けた。
(でも、ルークがあんなに強引な事をしてくるなんて、思っても見なかったけど・・・・)
 けれども目の前で小さくなり俯くルークの姿を見ている内に、なんだか妙にその姿が愛おしく
 思えてきて、ティアはルークの剥き出しになった厚い胸板へと、そっと指先をあてがった。
「ちょっと強引過ぎたところがあったのは、褒められたものではないけれど、貴方は頑張ったわ。
 まだ知らない事が沢山あるのは当然だもの。気を落とさないで」
「ティア・・・・・うん。ありがとう」
 青年に優しくそう言い聞かせている内に、ティアは以前ルークに第七音素の扱いを教えていた
 頃の事を思い出していた。

「もう・・・・ちっとも変わっていないんだから」
「わ、悪かったな。成長してなくて」
 思い出し笑いを堪えきれずに苦笑の表情を浮かべるティアに、ルークはやや憮然として応えた。
「ごめんなさい。――――じゃあ、続きをしましょう」
「へ?」
 謝罪の言葉を口にしたかと思うと、ごく自然な動きでネグリジェを脱ぎ、ティアはその美しい
 裸身をルークの目の前に惜しげも無く曝け出した。
 正しく、ぽかん、といった表情で呆然とその光景を眺めるルークに、ティアは穏やかな笑みを
 浮かべてみせる。
「まだ知らないコト。わたしも実際には経験がないから、上手く教えられるかわからないけど」
「あ・・・・あ、ああ!わかった、俺、頑張ってみるよ!」
 そう言われてようやく合点がいったのか、声に力を込めて返事をするルーク。
「全く・・・・返事だけは昔からいいんだから」
 そんなルークの姿に、ティアは母性本能を擽られるのを隠しながら小さく溜息をついてみせた。
「じゃあ、続ける前に――――ルークに、一つだけお願いがあるのだけど・・・・」

 譜石照明の微かに赤みを帯びた燐光が輝き、二人の双眸がその煌きを写し返す。
「こ、これでいいのか?ティア」
「多分・・・・こうするものだって思っていたんだけど、違うのかしら」
「な、なんか恥ずかしいな」
 鼻先にかかる、ティアの熱い吐息に艶かしさの様なものを感じ、ルークは瞳を逸らして言った。
 寝台の上に膝立ちになって、互いに密接して真正面から向き合っている状況を作り上げた当の
 ティアもやや当惑の表情を浮かべている。
「我慢して。――――それより、準備いい?良ければ、説明した通りにして頂戴」
「う、うん。・・・・いくぞ、ティア」
 一言、名前を呼んで、ルークはその顔を恐々とした動きでもってティアの顔へと接近させる。
「・・・・キス、するんだな。俺達」
「・・・そうね」
 互いの唇がふれるかふれないかの距離まで近づいてから、二人は互いが発した言葉の余韻を
 響かせる様にして数秒、時を待つ。
「――――っんぅ・・・・」
 どちらが洩らしたともつかぬ甘い囁きにも良く似た吐息が室内に響き、やがて訪れる静寂。
 ぎこちなくも、つよく、つよく互いを求め合う唇の動きだけが全てになっていき、二人は自然と
 寝台の上へと倒れこんでいく。
「――――はぁ、はっ・・・・はっ・・・・ふぃーっ・・・」
「んっ、ふぅ・・・・はぁ・・・」
 ようやく、お互いの顔を離し荒い息を吐いて新鮮な空気を貪る二人。
「い、意外と疲れるな、キスするのって」
「そ、そうね。慣れてない所為だとは思うけど、思ってた以上に大変な事なのね」
「うん・・・・・でも、なんか嬉しいな、これ」
 へへ、といつもの様に鼻の頭を指で掻いてルークは照れ隠しをして見せた。
「ええ。わたしも、嬉しいわ」
 そんな青年の顔に浮かぶ、満足気な笑顔につられてティアは優しく微笑んだ。

「・・・・・本当に、いいのか、ティア?」
「止めて、って言っても止めそうにない・・・・・なんて、今更言わないわ」
 心配気に問いかけてくるルークに、ティアは少しだけ冗談めかして言った。
「貴方に、して欲しいの。――――お願い」
 その表情は優しさを映したままに、しかし蒼い瞳の奥には決意を固く結んでティアは答えた。
「わかった」
 短く、それだけを口にしてルークはティアの微かに震えを見せる身体の上に、できる限り重さを
 感じさせぬ様に気を払って、折り重なるようにしながら自身の身体を寄り添わせた。
「んと・・・・・ここで、合ってるよな、ティア」
 尋ねながら、自らの脈打ち、固く反り返った肉棒を左手で掴んで、ティアのまだ潤いを残らせる
 小さな窪みへとあてがった。
(・・・ルークの、さっきまでより大きくなってる・・・・)
 本当に、自分の身体は巨大に膨れ上がったそれを受け入れられるのだろうかという恐怖にも似た
 疑問がティアの心の中に芽生えるが、彼女はそれを小さく頭を振り心の隅の方へと追いやった。
「あ、俺、また間違ってたか・・・?」
「ううん、ごめんなさい。そうじゃないわ・・・・・少し、ほんの少しだけ怖かったの」
「・・・・俺、上手くできないと思うけど、頑張るから。ティアのこと、守るから」
 ぐぐっ。
 ティアがその言葉に返事をするよりも速く、ルークは自らの勢いよく腰を突き進めていた。

「――――っぅ!」
 自らの繁みを掻き分けて押し進む青年の怒張を眼にしながら、ティアは自身を突然襲ってきた何か
 大事なモノを引き裂かれていく、鋭い痛みに身を固くして耐えた。
「ぅく、きっつぅ・・・・・」
 初めて男性の侵入を許す、ティアの締め付けを超えた、強烈な抵抗にルークは思わず苦しげな声を
 洩らしながらも、そこで止まれはせずに更に力を込めて濡れた花びらの中央へと己自身を送り込む。
「―――ぁあ!ぅあっ!いぁっ、うくっ!―――んっ!―――ルーク、ルークッ!」
「ティアっ!ティア!うぅ、あぁ!」
 想像を絶する痛みから、その肢体を跳ね回らせながらも腕はルークの背中に廻して離さずティアは
 愛しい人の名を叫び続ける。
 徐々に掻き入り、そして急激に増してくる圧迫感と、蕩けていくかの様な快感を己のペニスに受け
 突き入りながらルークは無我夢中で愛する人の名前を呼び続ける。
 みちっ、ぎちぃ、ぐちゅ、くちゅ、みりぃ・・・・・
 鈍い、重たく水を含んだ媚肉を掻き回す生々しく、淫靡な音が互いの性器を通して二人の頭の芯に
 まで響き、それが一層その行為を激しく燃え立たせていく。

「ティ、ティア・・・・・今、俺がティアの中に入っている、よ・・・」
 麻薬に痺れていくかの様な肉のうねりに声を途切れさせながらも、ルークは自身がティアの身体の
 中で繋がった事を確認し、声をかける。
「―――ぅく、ぁ、る、ルークっ・・・・・・わた、し、ちゃん、と、うけいれ、られ・・・・たの?」
「ああ、っ・・・・!大丈夫だ、ちゃんと俺を受け止めてくれてるっ!」
 自身の痛みよりも行為の正否を気に掛けて、そう口にするティアを励ますかの様にルークは答えて
 更に腰を奥へと捻り込むように突き入れた。
「ぁっ!ひ、くっ、いぁ!ぅんっ!ぁくっ・・・・っ!」
 灼熱の熱さを伴う怒張に、ティアの膣内の奥で最後の抵抗を示す純潔の証が、限界まで押し広げられ
 いびつに歪んでいく。
 その痛みをティアはルークの背中に、ガリ、と強く爪を立てて堪えようとするが、それが逆に青年の
 律動を激しく掻き立て、一層力強いうねりを呼び込む結果となった。
「く・・・ぅ、ひ・・・・・ぁ―――っ!?」
 ルークの求めてくる力が頂点に達し、みりぃ、と奥底で音を発してそれが裂けていくのがティアには
 はっきりと感じられ、まるで喪失した事への鎮魂歌を詠う様に彼女は一際高く、叫び声を上げた。

「くっ・・・やっと根元まで、入りきったよ・・・・ティ・・あっ!?」
 己の分身が、完全にティアの花芯の奥にまで収まりきったのを伝えようと、その目を結合部に向けて
 ルークは思わず驚きの声を上げていた。
「ち、ち、血が、血が出てる!?どうしよう!」
「っあ、ぅ・・・・お、おちつい、っ・・・て、ルーク・・・・」
 破瓜の血に染まる二人の繋がりを見て、半狂乱になって騒ぎかけるルークをティアは痛みを堪えつつ
 絞り出すように、それでも尚優しさを感じさせる声音で宥める。
「で、でも、ティア、真っ赤に・・・・・」
「いいの・・・・・っ、わたしが、貴方と・・・交わった証なのよ・・・・それは・・・んっ!」
 それだけをやっとの事で口にすると、ティアはその身体を震わせてから少しだけ丸め、ルークとの間に
 僅かな空間を作ってみせた。
「動いて、ルーク・・・・わたしで、貴方をキモチよくさせてみたいの・・・・」
 何故か恥ずかしいと思うこともなく、ティアはそう言ってせがむ様な眼差しをルークへと向けた。
 その涙に潤む瞳に、胸の奥の欲望を激しく衝き動かされ、ルークはこくり、と大きく頷いて応える。
「・・・・おれ、俺・・・・ティアの事、愛してる。好きで好きで、堪らない。だから、お前の事、全部知りたい」
「―――わたしもよ。ルーク・・・・」
 それだけを言って、聞いて、ルークは自らの腰を緩やかに、まるで壊れ物を扱うかの如く気遣いを込め
 少しずつ前後に動かし始めた。
 くちゅり・・・・くちゅり・・・・と規則正しくも淫らな水音が暫しの間、寝室に響き渡る。

 始めはゆっくりと、そして徐々にそれは激しさを増していき、追い詰められていく二人。
「ティア・・・・すっげぇ、ティアのここ、ヤラシイ・・・・マジで蕩けてくよ」
「ルー、クっ・・・・っ、わた、わたしも、ぅ・・・・熱くて、とかされそ・・・・・んぅっ!」
 引き攣る様な痛みと、身体の芯をじわじわと熱いモノで掻き乱されていく痺れにも似た刺激に
 ティアの声音が少しずつ艶を含み始める。
「うぅ・・・・ティア、なんか、俺、変だ・・・・」
 何かを堪えるようなルークの言葉に、えっ、と声を上げようとしたティアの身体が、ルークの
 両腕で大きく揺さぶられた。
「あぅ!」
 突然の痛みとその行動に驚いてティアが声を上げた時には、ルークは既に両腕でティアの腰の
 括れた位置を掴んでいた。
 そしてそのまま腕に力を込めて腰を強く引き寄せながら、ルークは自らの分身を注送していく
 速度を速めていったのだ。
「ぅく、る、ルーク、ダメ・・・・やめ、てっ・・・・それいじょ、し・・・んぅ!」
「ティアッ!ティア!―――ぅあぁああっ!!」
 びくっ、とルークは大きく身を震わせたかと思うと、一際強くティアに向けて腰を突き入れて
 野生の獣さながらに、吼え声を上げる。
 
 びゅるっ!びゅ、びゅくっ!どくっ!びゅぅ・・・・どぷぅ・・・・

「っ!―――あ、あぁぁ・・・・・・・」
 硬く、熱さをまだ失わぬルークの怒張から、自らの膣内へと大量に熱い体液が注がれるのを感じ
 ティアは小さく身震いして細く、吐息を漏らした。
「っはあ!ぁっ!はっ、はぁ・・・・ふ、うぅ・・・・ぁ・・・・ぅ・・・」
 本能の命じるままに生命の奔流を解き放ち、力尽きたルークは荒い息をつき、ティアの乳房へと
 顔を埋めて放心した。

「・・・・い、いまの、一体なんだったんだ、ティア・・・?」
「知りませんっ・・・!やっぱり、貴方ちょっと、ばかなのかもしれないわ・・・」
 自分の身に起きた、いや、起こしてしまった事の重大さに気が付かぬまま質問を投げ掛けてくる
 青年を見て、何だか泣きたい気持ちになったティアは、またも深く嘆息を漏らしていた。


 翌日、早速ジェイドの元へと訪れたルークは自分の仕出かしていた事を、恐ろしいほど朗らかな
 笑顔でもって説明される事となった。
 
「ティ、ティア!お、俺、どうしよう!」
「どうするも何もありません。責任を取りなさい」
「ま、まだ心の準備ができてないん―――」
「わたしの方こそ、準備もできなかったのよ!!」
「お、怒らないでくれよぉ〜」
「・・・・別に、100%の確率で的中するわけでもないんですがねぇ」
 結局はいつものやり取りになってしまう二人をニコニコと見守りながら、ジェイドはこそっと呟く。


 無論、その事をルークに教えるつもりなど、ジェイドには毛ほどにも無かった。




                                      ――――――おしまい?――――――


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