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作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
月下の契り 腹黒屋丼兵衛氏 ヒューゴ×マリアン 2006/01/15 2006/01/16

夕刻、王都ダリルシェイドの大通りを、赤いマントを翻して走る小柄な人影があった。
ある者ははっとした顔で振り向き、又ある女性は黄色い歓声を上げた。
少年は、派手な包装紙と小洒落たリボンで飾られた小さな箱を、とても大事に抱えていた。
<坊ちゃん、そんなに急がなくてもいいでしょう?>
「マリアンが用意をして僕の帰りを待っているだろうからな。それに・・・」
<ヒューゴ様、坊ちゃんの願いを聞き入れてくれるかな?>
少年の名前はリオン・マグナス・・・セインガルド王国の兵卒である。

今日は、彼の客員剣士の就任が決定した日でもあり、16歳を迎える誕生日でもあった。
彼の直接の上司でもあるルウェイン将軍の薦めもあり、兵営に入って独り立ちする決心
を固めていた。
彼の世話係でもあった屋敷付のメイド、マリアン・フュステルに告白し、ヒューゴの許可
が出次第、正式に式を挙げるつもりでもあった。
誰かに入れ知恵されたのか、ご丁寧にも市内の宝飾店で作らせた特注品の“指輪”
も用意していた・・・勿論、これが小奇麗な箱の中身であった。

「ただいま!」
普段では想像が付かない程の明るい声で、リオンは玄関の立派なドアを開けた。
「リオン様、お帰りなさいませ」
大広間で部屋の調度を行っていたメイドがリオンに気付き、恭しく傅いた。
「マリアンは?」
「マリアンなら、リオン様のお部屋でヒューゴ様とご一緒ですが。
何でも、ヒューゴ様がリオン様のお祝いを直々に行いたいのだとか」
(父さん、否、ヒューゴ様が・・・?)

リオンは意外に思った。
最近は疎遠などころか、実の親子である事すら隠蔽しようとするヒューゴにしては、
余りに殊勝な振る舞いであった。

「そうか、教えてくれて有難う」
リオンは軽く会釈するなり、一目散に自らの部屋に向かった。
<坊ちゃん、ヒューゴ様が坊ちゃんのお祝いをするなんて意外ですね>
「シャル、ヒューゴ様は僕が客員剣士付きになった事をお喜びなのだろうな」
リオン・・・否、エミリオ・カトレットは、ヒューゴが誕生日を祝ってくれているであろう
事も、心の奥底で密かに願っていた。
エミリオにとって、特に兵営に入れられてからというものの、ヒューゴはおよそ父親
らしい振る舞いを見せた事が無かった。
当然の事ながら、誕生日も屋敷付メイドのマリアンと、あとはレンブラント親子か
バルックが報告で屋敷に来ていればそれに加わった位である。
それ故に、ヒューゴの意外な振る舞いが嬉しかった事も確かであった。
・・・例え、それが王国の権力内への足がかりが出来た事への祝福だったとしても。

しかし、リオンはヒューゴよりも、セインガルドとルウェインに従うつもりであった。
父がセインガルド王室に取り入って商売するならそれでいい。
僕は、僕の道を行く・・・。

とうとう、リオンは部屋のドアまで来た。
リオンは襟と姿勢を正すと、厳かにノックした。
「リオンです」
ドアの向こうから、くぐもった声が響いてきた。
「・・・入れ。もう宴は始まっている」
ノブに手を掛けた時に、開けるな、という声が聞こえた気がした。
開ければ、取り返しの付かない事になる予感がした。
(・・・気のせいだろう)
ドアを開けた瞬間、リオンは信じられない光景を見た。

・・・寝台の上で、半裸の男女が睦みあっていた。

(一体、これは何なんだ・・・?)
リオンは、目の前の光景が理解出来ずに、小箱を持ったまま立ち尽くす他無かった。
だが、暫くすれば嫌が応にも何が起こっているのか分かっていくものである。
よく見れば、女を下から突き上げている男はヒューゴであり、虚ろな表情で微かに
嬌声を上げている女は・・・それが誰であるかは認めたく無かった。

「・・・・・・・・・」
「エミリオ、もう女の抱き方を知っても良い頃だと思ってな。
任官の褒美に、この父が直々に見本を見せる事にしたのだ。・・・よく見ておけ」
ヒューゴはマリアンの腰を掴み、更に突き上げた。
「ああっ・・・、あ・・・ヒューゴ・・・様ぁ・・・」
マリアンは口元から微かに涎を垂らしながら、ヒューゴの剛直に喘いでいた。
「驚いた事に、この女は仕事柄にも関わらず、秘め事は初めてだと言いおった。
そこで、我が社で開発した試作品をこの女に投与してみたのだ。
見ろ、この恍惚な顔を。破孔の痛みすらも感じておらん様だ」
その場に凍り付いて微動だにしないリオンに、ヒューゴは懈怠な笑みを浮かべると、
己とマリアンが繋がった部分を指で拭い、指差す格好でリオンの目の前に突き出した。
・・・とろりとした愛液は赤く染まり、鉄臭い匂いが漂っていた。

リオンは、快楽に浸るマリアンの表情を直視出来なかった。
出来る事なら、マリアンで無ければ良いのにとさえ思った。
いつものマリアンは、凛とした仕草と明るい笑顔が似合う立派な女性であった。
そのマリアンが・・・こんな淫らな表情を見せるものなのか?

ヒューゴはリオンの気持ちを知ってか知らずか、マリアンを四つん這いの姿勢にすると
後ろから攻める格好で突いた。
「・・・どうだ、女を鳴かせてこそ、一人前の男というものだぞ」
大して息も付かずに、ぱんぱんと子気味良い音を響かせながらマリアンの臀部を突いた。
「どうだ、濃の息子の味は!」
「あぁぅ・・・あぁあぁあぁ!・・・イィです・・・ヒューゴ様ぁ!!」
マリアンは更に悩ましい嬌声を上げ、リオンは堪らずに両耳を塞いで縮こまった。
小箱は既に床に転がり、蹲ったリオンは顔を隠してすすり泣き始めた。
リオンの姿を見て、ヒューゴはおぞましいまでに勝ち誇った笑みを浮かべた。

「くっくっくっ、小僧一人がどう足掻こうとも、運命からは逃れられんのだ。
せいぜい、この女を利用して動いて貰うまでだ・・・」

暫くして突くのを止めると、剛直をするりと抜いてマリアンの顔に白濁液をかけた。
マリアンの綺麗な顔が、雄の白い粘液を拭きつけられて汚されていった。

荒々しい事の後、ヒューゴはオベロン社総帥の顔に戻っていた。
その口から発した言葉は、エミリオにとっては更に残酷な仕打ちであった。
「・・・エミリオ、明日からは公用以外、この屋敷に来てはならん。
お前にはあくまで“リオン・マグナス”として、セインガルド王国とオベロン社、そして
この濃に奉公して貰わねばならんからな」
呆然とした表情のリオンの視線の先を追い、事の後のまま寝台に横たわったマリアンの姿
を見つけたヒューゴは、更に付け加えた。
「・・・マリアンの事か。屋敷でも良いが、城への連絡もマリアンに任せる事にしよう。
どちらでも、お前の好きにすれば良い」
ヒューゴは豪奢なローブを纏うと、そのままリオンの部屋を後にした。
「・・・っく、う・・・」
リオンは弱弱しく立ち上がると、泣きながら柱に拳を打ち付け始めた。

僕は、マリアンを守る力を手に入れた筈だった
これで、守れる筈だった

皮膚が破れ、拳が血まみれになってもリオンは拳を叩き付けた。


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