総合トップ>SS一覧>SS No.6-001
作品名 |
作者名 |
カップリング |
作品発表日 |
作品保管日 |
色々な道 |
728氏(22スレ目) |
エロ無し |
2006/08/13 |
2006/08/17 |
…夢を見ていた。
幼い頃の夢。どこまでも続く原野と、冷たく頬を切る風。自分はどこまでも走っていく。
しかし途中で雨が降り雷がなった。帰ろうと必ず彼女が向かえに来るのを待とう。
緩やかに伸ばした体の下に、ふっくらとした地面を感じている。
投げ出した手足を、柔らかく萌えた草が受け止めている。
目を閉じていても暖かい陽光が全身に降りそそぎ、甘い花の香りを含んだ風が頬を撫でるのがわかった。
快い眠気に身を任せながら、ぼんやりといぶかしく思う。
今日は雨は降らない、という事は分かっていても、彼女を待った。
「リッドー!!」
ほら、来た。
どこかで仕事をサボっていれば、必ず迎えにくる。
「昔と変わらないな、ファラは」
俺の所にたどり着いたファラに、今日見た夢の事を考えながら言った。
勿論ファラの方は、いつも通り怒り出すわけで。
「…?こんなところでまた!今日オムレツ作ってあげないよ!!」
「げっ!わ、悪かったよ…」
ファラの前では、俺は頭があがらない。折角の夢心地を邪魔されてしまったが、彼女を待ってたのは事実な訳で。
「…なぁ…ファラ。」
「何よ、……キャッ!?」
ファラは小さく悲鳴を上げた。
俺がファラの手を引っ張ったからだ。突然の出来事に驚いたファラは、そのまま地面に倒れ込んだ。
「いきなり何するの!」
顔に土がついて、かなり怒っている。
「なぁ…。」
「何よ」
「平和だな…」
俺の一言にぽかんとしている。…さっきから自分でも何を言っているか分からない。
ただ、心地よい風や柔らかい土の匂いなど、旅の時は感じる暇も無かった。
しかし、今、感じている。それを身にしみて思った。
ファラは、遠くの風車を見つめた。ゆっくりと、ゆっくりと回るそれを、意味ありげに…。
「時間って早いものね」
「え?」
「キールやメルディと別れてから、もう2ヶ月たったんだね…」
少し寂しげな顔をしながら。俺の視線を感じたのか、慌てて作り笑いをした。
…そんな彼女を、ゆっくりと抱きしめた。
抵抗どころか、ファラは俺の背中に手をまわした。
「こんな複雑な気持ちになるなら…出会わなければ良かった。」
いつもは見せない彼女の弱い一面が、俺の前に現れる。
俺もそう思う。でも…
「…それは違うんじゃないか?」
「…え?」
「あいつらに出会って、俺達は色々な物を見つけた。勇気とか、優しさとか…」
「ふふ…」
「な、何だよ!笑うなって…」
自分でもくさい台詞を言ったと思って、少し後悔した。
「ゴメンゴメン、馬鹿にした訳じゃないんだ。」
そう言って尚笑い続ける彼女に少し腹が立ち、やけになって、唇にむしゃぶりついた。
「ふぅん…」
それを彼女は受け入れる。
幼なじみという壁は、とっくに壊されている。
ゆっくりと俺の舌に絡めてくるファラの舌。
また吹いてくる風の心地よさ。
「ねぇ、リッド…」
唇を離し、俺を見つめる。
「また…会えるといいね」
…そんなの
「当たり前じゃないか」
END
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