総合トップSS一覧SS No.6-067
作品名 作者名 カップリング 作品発表日 作品保管日
想いたくて… owata氏 リリス 2007/10/01 2007/10/29

神の眼の騒乱に決着がついて半年が経った。
リーネの村はその小ささから外郭の破片による被害も少なく。今ではすっかり元どおりの生活を取り戻していた。
リーネの村の一番奥。煙がまるで、絵本のパン工場の様にポンポンと上がる家。
かの英雄、スタン=エルロンの生まれた家である。

英雄が生まれた家というと期待させられるものがあるが、普通のそこいらの家と何ら変わりない。
そんな家の中から一人の女性が出てくる。スタン=エルロンの妹、リリス=エルロンである。
太陽の光を浴びて乾いた洗濯物を取り入れ、再び家へ戻っていく。
「お兄ちゃんとおじいちゃんはノイシュタットか…」
本来はトーマスやスタンがいるはずのこの家は、リリスのみとなっている。
何時もより少ない食器を、泡立てた洗剤で慣れた手つきで洗っていき、ふてくされた様にポツリと呟く。
「コングマンさんの40歳の誕生日イベントって、何も誕生日まで戦わなくていいのに…」
そのイベントにはスタンとコングマンの一対一の勝負が組み込まれている。
「神の眼の騒乱」で初めて戦った時、コングマンが惜しくもスタンに敗退してしまい、その雪辱を晴らすリベンジマッチが設けられている。
かつての英雄同士の戦いと言う触れ込みもあり、貴族もそうでない人も多く闘技場へ訪れる盛大なイベントとして、大いに期待されている

「こっちには何の相談もせずに、いきなりだもん…」
取り巻きの男がリーネに押しかけてきていきなり、「もう変更できないから来てくれないと困る」と勝手な事を言い出した時には、
まんぼう戦哮をお見舞いしようとしたっけ… それでも、スタンの人のいい性格から即答で「分かりました」と返事をしてしまったのだ。
取り巻きの男もさすがに何の見返りもないスタンを誘い、申し訳なく思ったのか、リーネの人を数人、タダで招いてくれたのを思い出す。

「なんだか… マギーおばさん。ノイシュタットに行くの楽しみにしてたけど…」
優しいマギーさんは、人が傷付けあう闘技場を嫌っていたが、コングマンが戦うと聞いて、「私も行く」言い出した時には驚いた。
そして、村では見た事もない意地悪な笑みを浮かべたのも、さらに自分を驚かした。
かつて、女性でありながらノイシュタットの伝説のチャンピオンとして君臨し、
「あらくれマギー」という異名とともに、多くの男性を叩き伏せたとんでもない人である。
どうやら、チャンピオンの時代にコングマンの何らかの因縁があったようである。

「お兄ちゃんはディムロスがないのに、コングマンさんに勝てるのかしら?」
ディムロス譲りの剣術があるとは言え、ソーディアンがないのは明らかにスタンにとって不利だ。
そんな風にスタンのことを考えていると、玄関のドアからコンコンとノックする音が聞こえてくる。
「は〜い!ちょっと待ってくださいね。」
洗い物を中断して、エプロンドレスで手を拭き、玄関を開けるとそこにはこの村では見た事のないの初対面の女性が立っていた。
「あの〜 スタンさん居ますか?」
初対面で挨拶もせず、女性はリリスにいきなり自分の用件を述べる、礼儀知らずなその態度に少しムッとするが、
一応お客さんであるわけだし… と心の中で呟き、にこやかに対応する。
「今、ノイシュタットに向われたので、ここにはもういないですよ。」
純粋さを武器に。そして、その情熱を動力にして、世界を救ってしまった兄。
四英雄とまで言われて、世界中にその名前が知れ渡り有名になった。
そのスタンを一目見ようと沢山の人たちがこのリーネに押しかけてくるようになった。

「あ、そうなんですか? …あの あなた、スタンさんの家の召使いさんですか?」
「 !!  わたしはリリス=エルロン!! スタンの妹です!!」
召使い呼ばわりされ癪に障ったのか、先ほどの相手の無礼な態度もあわさり、思わず怒鳴りつけてしまう。
「っていうか、また兄に言い寄ろうする人ですか!?残念ながら兄には心に決めた人がいるんです!!そう言う用件でしたら、早々にお引き取りください!」
リリスは感情に任せるまま言い切ると、ものすごい剣幕で相手を睨みつける。
そして、目を丸くしている女性に気付き、ハッする。
すぐに場を取り付くろうためホホホ… と乾いた笑いを浮かべるも、リリスの剣幕に恐れをなしたのか、そのまま一目散に逃げていく女性。
「はぁぁぁぁぁ…」
リリスはその女性の背中が見えなくなるのを確認すると、今度は体中から搾り出したようなため息を吐いた。

・・・・・・・・・・・・

夜になり、入浴してパジャマに着替えたリリスは洗面台で頭を解かす。
1人で静かになった家にいると、込み上げるような寂しさに襲われる。
兄を慕う女性が沢山いる… そう頭に思い浮かべると今度は胸が締め付けられるような錯覚が生まれてくる。
「また、1人でお留守番か…」
結っている髪を外し、ストレートヘアにたなびかせて、切なそうに真暗な部屋を見渡す。
兄がいない… 叔父もいない… 
まるで周りから知り合いが1人も居なくなってしまった様な、不安な気持ちがリリスの寂しがり屋な心を覆い尽くす。

(ちょっとだけならいいよね…?)
顔を少し赤らめ、横目でちらりとスタンのベットを見ると、そのままそちらに向っていく。
そして、スタンの使っていた寝床に入り、布団を頭から被る。
「よく… お兄ちゃんが居ない時にここで寝てたっけ…」
こうしていると、兄の温もりを感じる事ができるような気がして、心細い気持ちが少しは和らぐからだ。
子供っぽい自分の行動に、クスリと苦笑を浮かべて。少しほどの気恥ずかしさを感じる。

「…でも、あの時と今とは、大分目的が違うけどね…」
リリスは布団の中で自分のパジャマのボタンを解く。
形のいい整った二つの胸が露わにし、桜色に染まった頂きがかすかに服から見え隠れする。
「よいしょ…」
そして、今度は自分の履いていたパジャマの下を脱ぎはじめ、白い無地の下着が露わになる

「ん…!こんなことするのは… その… お兄ちゃんとルーティさんのせいなんだからね…!」
いい訳めいた言葉を浮かべ、胸を軽いタッチで揉んでいく。

「あの人は… お兄ちゃんと…」
不意にあの日の事が思い出され、途端にリリスの顔が真っ赤になる。
1年前のまだ、ミクトラン征伐のための旅をしていた頃… スノーフリアの町を訪れた時のこと。
覗くつもりはなかった… と頭の中で言い訳を思い浮かべる。
1人宿屋にいたルーティに、料理を届けようとした時に、本当に偶然にスタンがいて、ルーティに愛の告白をしていて…
そして、その後すぐに体を重ね合わせ、愛し合った
明かりも消さずに、お互いの秘所を隠そうともせずに、そして、私に覗かれている事も知らずに…
兄として、慕っていたスタンの猛る剛直が鮮明に思い出され、自分の秘部がさらに潤っていくことを感じる。
自分の都会への興味が抑えきれずに、飛び出した子供っぽい兄。久しぶりに見た兄は、瞳にとても強いきらめきを秘めていた。

兄として慕っていたはずのスタンは、旅の中でいつの間にか一人前の成人として、人間として大きく頼りがいのある男性となっていた。
自分が居ないとまだまだ駄目だと思っていたスタン。そのスタンがルーティと舌を絡ませる程の激しいキスをして、体を重ねて愛し合っていた…
猛る剛直とみだらに濡れる秘部が思い出されると、それと同時にリリスの手は自分のふくらみを強く揉みくだし始める。
ルーティよりも大きな胸になぜか満足感を得るが、スタンはルーティを選んだ。
自分は妹なのだ… スタンに抱かれるはずはない。しかし、頭も浮かんでくるのはルーティへの嫉妬心のような感情。
心の奥底にはルーティに対するそんな思いが渦巻いてくる。
どんなに自分が想おうと、スタンは肉親であるから身を結ぶ事はできない… そう納得しようとする。

「お兄ちゃん… お兄ちゃん…!」
胸を自分で鷲掴みし、少し強めの力で愛撫を加えると、リリスはうわ言の様にスタンの名を繰り返して呼ぶ。
スタンの名を呼ぶたびに、スタンの事を思うたびに体が熱くなってくる。胸の桜色の頂きが、熱を帯びてツンと反り立ち、
リリスは親指と人差し指でそれを捻るようにつねり上げると、ビクと先端に走る甘い快楽に体を震わせて反応する。
「ひゃう! んん!…分かる? あ…! わたし、すごく感じてる…!!」
胸から走る快感に酔いしれながら、空いた片手をパジャマを脱いだ下着へ伸ばしていく。
すでにしっとりと濡ているそこは、かすかに透けており、下着の奥の桜色の秘部が見えている。
そこに中指をはわせると、ちゅ… と言うかすかに湿った音が響いてくる。
そして、胸とは違う甘い感覚を味わいながら、軽いタッチでそこの指を何度も往復させていく。
リリスは甘い声を発しながらその身をくねらせ、沸き起こる快楽の虜になっていく。
程なくして下着はすでに、その意味を失い秘裂や包皮などが激しく濡れた下着の下からヒクヒクとうごめく姿が見える。
下着の上からの愛撫では足りなくなったリリスは、下着をするりと脱ぎ捨てると柔らかい茂みに囲まれた秘所からトロリとした愛液が流れ出る。
「はあ… はあ… んんん!!!」
両足を開き、その全てを露わにすると右手を使い、秘裂の両脇に指を添えて、それを押し広げる。
くちゅ という音と共に広がり、そして左手でその秘裂を直に触れ快感を求めると、リリスから嬌声が聞こえてくる。
自分の鼓動に合わせてピクピクと動く花弁に指をはわせるたび、体全体がビクンと痙攣を起こしたように大きく揺れる。
真暗な部屋から、ちゅくちゅくと水音が響き渡り自分の指が生み出す快楽におぼれていく。
腰を浮き上がらせながら、体を震わしさらに強い快楽を求めようと自分の指をその秘洞の中へ進めていく。
「ひゃん!だ…めぇ…!!んん! んんん!」
熱い息を吐き出し、つきたてた中指が膣内に沈んでゆくと、すでに濡れきった肉壁が締め付けながらそれを歓迎する。
リリスは、強い快楽に耐えながらも指を前後に動かし刺激を与える。指の力強い動きに膣からは、絶え間なく愛液が流れて出てくる。
指はさらに奥へ進んでいき動かすと、その結合部から指を進めた分、愛液が押し出されスタンのシーツを濡らしていく。
じゅぶ、じゅぶと湿った音が響き、白い喉下をさらしてリリスは指からの愛撫に熱中する。
「はっはぁ… お兄ちゃん!」
かつて兄の剛直が脳裏に浮かび上がると、それと同時に秘道は蠕動し、中からはトロリと濃い目の愛液が指を動かすたびに流れ出てくる。
他の男性のそれを見た事がないリリスにとって、自分を慰める時には必ずスタンの剛直が思い出される。
…例え他の男性を知っていたとしても、おそらくスタンのものを想像するだろう。
「んん!お兄ちゃん…  気持ちイイ!」
秘道を指が捻るように動き、それによって肉壁が強く擦られるたび人一倍大きな声が出る。
本来なら声のトーンを下げる所だが、そんな思いはリリスには微塵も浮かばない。
自分の指によって得られる強烈な快感と、兄への想いに思考は満たされてひたすら行為に没頭していく。

挿入する指も人差し指を合わせた二本になり、前後に素早く往復させるたびに自分の愛液が飛び、シーツを濡らしていく。
ヒクヒクと秘道が断続的に収縮をするとリリスも体を震わして、込み上げてくる絶頂を耐える。
腰を浮き上がらせながら、自分の秘部に激しく指を出し入れし、勃起した陰核を捻り上げると音高い水音と共に愛液を噴き出し絶頂を迎える

・・・・・・・・・・・

「はぁはぁ… んむ… むちゅ…」
虚ろな表情で、絶頂の余韻に浸るリリスは手に付いた大量についた愛液を夢中に舐めとり、きれいにしていく。念入りにそして執拗に舌を指に絡ませる

まだまだ足りない…。指だけでは足りない…。兄のような逞しい剛直に体を貫かれたい…初めて指で慰めた時は、失神してしまったほどだ。
ならば、指よりも太くあれほど大きかったもの入れればどれほどの快楽を得る事ができるのか…

恐怖心と期待、そして疼きの止まらない秘部。リリスは重い体を起こし、下着も履かずに自分のタンスへ向っていく。
「これを使うのも久しぶりね…」
タンスの一番上を空け、下着などの下に隠された木彫りの男根を取り出す。

「あ〜ん!…んちゅ……んっ。」
木彫りを口に含み、るろるろと舌で舐めると、かすかに鉄のような…そう、血の味が口の中に広がる。
そうすると、リリスからは始めてこれを使った時の事が思い出される。
自分の大事な処女を、こんな血の通わない木でできた男根で散らしてしまった罪悪感。
肉壁を全て擦り上げ得られる快楽。そして、何よりも強く思い出されるのは始めて入れた時のあの痛み…

また、あの痛みを感じなければいけないのか… と恐怖心のようなものが浮かんでくる。
しかし、得られた快楽もまた大きく、あの時は初めてでありながら何度もこれにイかされた…。

リリスの頭の中で痛みによる恐怖と、木彫りの男根から受けた快楽。その二つがグルグルとめぐる。
しばらくして決心したかのように、男根を握り締めて秘部に近づけていく。

「はぁ… お兄ちゃん… いくよ…」
リリスは痛みの恐怖を振り払い、一気にそれを自分の奥深くまで挿入する。
「!!」
体に電流のように鋭く駆け巡る感触。歯を食い縛って耐え様としていたが、自分の予想とは違うその感覚にリリスは困惑する。
「あ… あ…!!」
痛みがまるでない… それどころか、初めてのときの時より数倍も強い快楽に言葉を失ってしまう。
一番奥まで入れられたそれを動かす事も忘れ、秘部からはそれをくわえこんだ状態で大量の愛液が吹き出る。
指とは違い、どんな強い締め付けにもその形を変えずに、貫く男根の刺激に、早くも達してしまう。

「あう…!」
処女を破った痛みが全く込み上げてこない… リリスは指に力が入らないのかぎこちなく木彫りを前後に動かす。
ゆっくりとした稚拙な動きでも、締め付けを物ともせずに、突き進むそれに意識ごと侵されていく。
「は!ううう…!!ひゃう!!」
数度往復しても、あの時の痛みが込み上げてこない事が分かると、木彫りの動きを徐々に激しくしていく。
狭い膣内を押し広げ、肉壁を擦り上げるたびにリリスの口からは甘い喘ぎ声が響く。

スタンのベットからは、濡れた粘膜のすれる音が聞こえ、強く締め付け纏わり付いた肉襞が、
ずりゅずりゅと捲り上げられると強烈な快感から目に涙を浮かべ、体験した事のない感覚に翻弄されていく

木彫りを最奥まで突き入れると、子宮入り口を小突かれたリリスは大きく体を弾ませ達してしまう。
膣内全体が強く収縮し、それが締め付けにより前後に動かなくなると、リリスは木彫りを動かせる左右に揺らし引き抜こうとする。
膣を掻きまわす木彫りの感触に意識ごと持っていかれそうになり、歯を食いしばり何とか耐えようとする。
「くううう…」

木彫りを引き抜ける寸前まで、引き出すと再び深くそれを挿入する。
すでに、リリスの頭の中には自分に快楽を与える事しか浮かんでこない。
体をガクガクと震わしながら強く握り締めた木彫りを天井を擦り上げるよう出し入れする。
「あはぁ!!」

出し入れのたびに握りしめていた指が陰核が触れ、最奥に木彫りを打ち付けると潮を吹き、
疲労と凄まじい絶頂の余韻に浸りながらそのまま意識を失ってしまう。

「…?」
鈴虫の美しい泣き声に、ゆっくりと意識を覚醒させて周りの状況を確認する。
部屋は闇深く覆われており、おそらく外は月も輝いているだろう。
「…ん!」
愛液と汗でべとべとになった体を起こして、とにかくベットから出ようとすると、自分の膣に木彫りが深く挿れられたままである事にきづく。
膣にある木彫りが体を起こす動作でずるり膣を擦り上げると、わずかに体を振るわせる。
「やだ…! 私ったら…!!んん…!」
自分の膣内にの木彫りを優しく引き抜くと、膣から濃い目の愛液がとろりと流れ出てくる。
「はぁはぁ…」
気持ちよかった… と頭の中に浮かんでくると同時に、むなしさが込み上げてくる。
どんなに体を喜ばしても、心は満たされない。生殺しのようなそんな感触だ…

「ルーティさんはお兄ちゃんとした後も、こんなに苦しかったのかな…?」
そんなはずはない… 本来なら愛し合うもの同士がする神聖な儀式だ… こんな悲しみが込み上げてくるはずがない
「何やってるんだろう私… こんなのおかしいよ…」
いろいろ考えているうちにリリスは眠気に誘われるまま、眠ってしまう


(リ… リリ…)
まだ外で鈴虫が鳴ってる… 夜は長いな

(リリ… リリ…! リリ…!)
…まだ鳴ってる。それにしても騒がしい鈴虫ね… クス、まるで兄さんみたい…

(リリス… リリス。  リリス!!)
リリス、リリスって… おかしな鳴き声… それに声もお兄ちゃんそのものだし…

「リリス!大丈夫か!リリス!!」
「え!?お…お兄ちゃん!?」
目を開くと兄の心配そうな顔が飛び込んできて一瞬にして覚醒する。

「リリス!よかったぁ… なかなか起きなかったから、どうしようかと思ったよ…」
「え…?ええ!?なんで、もう帰って来たの!?」
はぁぁ〜〜〜〜と安堵のため息をつくスタン。リリスは後、二日は帰ってこないと思っていた兄が家にいて、混乱している。

「うん。何だかよく分からないうちに中止になっちゃったんだ。コングマンの誕生日パーティー…」

5日間予定されていた誕生パーティーはコングマンとスタンの一騎打ちの勝負が用意されていたが、
2日目のスタンといざ戦おうとしていた矢先、突如乱入者が現われてコングマンに勝負を挑んだ。
格好をコングマンに似せられてたそいつは「にせコングマン」と名乗り、
そして後に超満員となっていた闘技場で逸話と呼ばれる事になる名勝負「ヘラクレスアームズ」が展開されることになる…
その勝負は、コングマンのぎりぎりの勝利で幕を閉じたが満身創痍となったコングマンは、それと同時に倒れてしまい。入院が必要となったのだ。
当然、主役のいないパーティーなど開くわけもなく中止になったのだ…
「そ… そんな…」
自分の予想もしていなかった事態に動悸は早くなる一方である。

「リリス! お前なんて格好してるんだ!!」
スタンが驚いたようにリリスを指差す。
「ほえ?」
間の抜けた声を発して自分の体を見ると、パジャマのボタンはひとつも閉まっておらず開放され、そこからは魅力的な膨らみがちらちらと見える。
「…!!  きゃあ!エッチ!! 向こう行ってよ!!」
腕で胸を覆い隠し、自分があられもない姿である事に気付く。布団のため見えないが、下着も履いてはおらず、体から冷や汗が噴き出してくる。
「リリス… 俺が居ないと、こんなにだらしなくなるなんて… ん?何だこれ?木の棒?」
「!!」
滑らかしいリリスのその姿を見ても、全く動揺する事がないスタンは、布団からはみ出していた木彫りを目にして、
寝床である場所に必要もないものが置いてあるっとそれを手にとろうとする。
リリスは体中の血液が顔に集まったのではないかというくらい、真っ赤な顔になり、
体をわなわなと震わしながら、聞き分けの悪い自分の兄に怒りを覚える。

「向こうに… 行ってって言うのが…!」

「分からないのぉ!!?」

ヒステリックに大声を上げると、あまりの声の度量に顔を引き攣らしたスタンは、恐れをなしたのかそのまま一目散に家の外に出て行く。

「はぁはぁ… あせったわ… 」
いそいそと服を着替え、シーツを取り替えていくリリス。

「それにしても… こんな姿を見たんなら、少しは焦ってもいいじゃない… 馬鹿…」
魅力的な肢体を目にしても、全く動じなかったスタンにふと不満を感じる。

(やっぱり、私は妹。 お兄ちゃんとは…)
視線をおとし、落胆したように頭を伏せるリリスは、スタンが自分を女性としてでなく「家族」という目で見ていることを改めて思い知らされる。
でも、これのおかげで踏ん切りがついたような気がする… 
「お兄ちゃんは家族として私の事をしっかりと愛してくれてる… 女性としてでなく家族として… 「家族」としてはこの上ない幸せ。家族である私にとって一番の幸せよね…!」
今は強引にでもそう理解するしかない。でも、いつかこの思いもきっと若い頃のいい思い出になるはずだから


さらに時はすすみ半年後…
「エー!お集まりの皆さん!!私、ルーティ=カトレットと、ここに居るスタン=エルロンは今日から一緒に、旅に出る事になりましたぁ!!」
町中に聞こえるような大きな声を出し、手を大きく上げてアピールをする。
「ええーーーーーーー!?」
ルーティに負けず劣らずの大声で心底驚いた反応を見せるスタン。

「なんでおめえがビックリしてんだスタン?」
頭が追い付いていない戦友の反応にニカッと笑顔を浮かべるコングマン。
「ほう、ルーティ君とスタン君が旅を…」
ウッドロウは、二人がこんな事になるだろうと、うすうす予想していたが、恥かしがり屋のルーティからそんな事を言い出すとは思っていなかった。
少し驚いたように顎鬚に手を当てて、感慨深く二人を見る
「こりゃ、お二人に送る愛の歌を考えないとな。」
手に持っているマンドリンをジャジャーンと鳴らして、茶化すのでなく本心から祝福するジョニー

「ルーティ… 準備が整ったのだな。」
孤児院の当面の運営資金を支度して、そしてスタンと二人で旅をする決心をしたルーティに優しい笑みを浮かべるマリー。
「一年以上もお疲れ様です。」
おそらく大変だったであろうルーティを労うかのように、行儀良くペコリとお辞儀するチェルシー。
「お二人の旅を心からご祝福しますわ。」
覚悟を決めていたのはフィリアも同じである。1年と言う長い時間であるがスタンへの思いも断ち切り、心から二人へ祝福の言葉を述べる。

「お兄ちゃん。元気でね!」
(いってらっしゃいは、もう言わないよ… たぶんここに帰ってくることはないはずだし…)
「ルーティさんも、これから大変になると思うケド、がんばってね。」

「あと、スノーフリアみたいな見たいな事は、なるべく控えてね♪」
「「「「「?」」」」」
「「!」」
「リ、リリ、リリス…、もももも…もしかして…」
「あ!そう言えば、オーブンでパンを焼いてたんだった!焦がしちゃう♪」
くるりとみんなに背中をむくと、意地悪そうにチロッと舌を出して、家へ戻っていくリリス。

「はっはーん!そう言うことか!!おめえら…」
スタンにいらない助言をしたあの時の諸悪の根源であるコングマンは、二人の反応を見てだれよりも早くリリスの言った言葉の意味を理解する。
「コング。例え勘違いであろうと… それ以上、口を開けば… ねぇ?」
スノーフリアでの様な、にこやかな笑顔を浮かべて、ルーティは手のひらのレンズ(大きめ)に晶力を集中させる。背中には斧を持った屈強な男の影が…
「お、おお… な、何言おうとしたか忘れちまったぜ…」
あの時の猛攻が一瞬のうちに思い出され、へっぴり腰になりながら後ずさりするコングマン。
「よろしい… それじゃあ、スタン行くわよ!!」
「ああ… その、わかった… そそそ、それじゃあ皆…」
お二人の旅は閉まらないうちに始まった。これは兄とルーティへの仕返しも兼ねたリリスの最後の、ちょっとした意地悪なのかもしれない…

おまけ
「おや?あんたコングマンじゃないかい?」
「あ!マギーおばさん。こんにちは。」
「マギー? あんた「あらくれマギー」か!? ひ… ひぃ〜〜!! 勘弁してくれぇ!」
「情けない声出すんじゃないよ… 仮にもあたしに勝った男でしょうに…」
「は?あ…あんたにいつ勝ったって?」
「さあ、いつだったからねぇ… 最近の事のような昔の事のような…」
「ボ…ボケちまったのか?」
「耄碌(もうろく)したかどうか、試してみるかい?」
「ごめんなさい!許してください!このとおりですから〜〜〜!!」
「大の男が情けないったらないねぇ… 」


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